2010年12月15日水曜日

PR2ロボット、7日間で70キロの連続自律走行を達成!

Continuous Ops

Willow Garage社の「連続オペレーション」チーム(Eitan Marder-Eppstein, Wim Meeussen, Kevin Watts)は、今までの当社の持つロバスト性の記録をはるかに上回るマイルストーンを達成しました。7日間で、70キロ(43.5マイル)の連続オペレーションです! PR2ロボットは、オフィス内を自律走行し、バッテリーの残量が少なくなれば、自分だけで、コンセントを探し電源プラグを差し込まなければいけません。例外は、どこかで動けなくなった時にだけ、チームメンバーにテキスト・メッセージを送ることが許されていました。そのメッセージを受け取ったチームは、ウェブ経由でPR2を動ける場所に移動させましたが、結局、2回だけの緊急移動ですみました。この写真のとおり、ロボットは、走行しながら、オシャレになったみたいです。

PR2とROSを用いて、ここまでのロバスト性を達成するためには、数知れない努力が秘められています --- 走行距離250キロ以上のデバッグ、Linuxカーネル・パニック、消灯してしまうオフィスの照明、バッテリーの温度上昇、必要以上の安全性ロックアウトなどなど。実際には、このレベルに達するために、3回の自律マラソン(26.2マイル)を完了させています。これらぼすべての改良は、PR2とROSのコミュニティにリリースされ、多くの研究に用いられることになるでしょう。「連続オペレーション」チーム、万歳!

PR2ロボット研究コミュニティが、アジア・欧州・北米地域で拡大

2010年12月15日の記者発表(原文)の和訳です。


Willow Garage社「PR2ロボット研究コミュニティが、アジア・欧州・北米地域で拡大」

サムソン電子、仏国立科学研究センター(LAAS)、
ワシントン大学、ジョージ・ワシントン大学がPR2ロボットを購入


2010年12月15日(米国カリフォルニア州メンロパーク市) – Willow Garage社は、PR2ロボットを用いた研究コミュニティが、世界の16の研究機関に拡大したと発表した。今までは、家庭や事業所向けのパーソナル・ロボットのアプリケーションのデザインや実験を開始する前に、研究者たちは、ロボットのハードと付随するソフトウェアを自分たちだけで構築することに多大な労力と時間を要していましたが、以下の4つの先鋭的な研究機関の研究者やエンジニア達は、、PR2ロボットの購入により、まだ開発されていないパーソナル・ロボット向けのイノベーションや可能性を、即座に研究し試すことが可能となりました。

  • 仏国立科学研究センターLAAS研究所(フランス・トゥールーズ市)
  • ジョージ・ワシントン大学(ワシントン市)
  • サムソン電子(韓国・水原市)
  • ワシントン大学(シアトル市)  
Willow Garage社では、ロボット研究者が、研究成果を共有しあいながら効率よく、さまざまな応用を開発できる環境やハードウェアとソフトウェアを提供することにより、パーソナル・ロボットの研究開発に大きな前進を与えるような基盤を築くことが、主要なゴールとなっています。多くのユーザーを有するPR2ボット・プラットフォームとロボットOS(ROS)の両方を用いることにより、箱から取り出してすぐにでも、技術革新や研究開発の課題にすぐに取り組むことができます。

PR2は、本年5月に、120を超える応募の中から選ばれた11の最先端の研究機関に無償で提供されました。この9月、PR2ロボットの販売を開始。 

Willow Garage社CEO兼社長スティーブ・カズンは、「PR2の販売が開始してから短期間のうちに、PR2ロボットが3大陸に4台出荷できたことを誇りに思っています。また、PR2コミュニティが、あっという間に成長していることに感銘を受け、今後、新たに加わった4つの研究機関で、どのような研究や新しい応用開発が生まれてくるか、成果を楽しみにしています。」と語っています。

1台めのPR2は、サムソン電子(韓国・水原市)の本社研究所に、既に届いています。世界最大のエレクトロニクス企業であるサムソン電子は、PR2を用いて、今までの自社のロボット研究の成果をさらに発展させるために、PR2を購入しました。韓国は、世界でもIT技術がもっとも進んだ国のひとつで、「2020年までに、1家に1台のロボット」の夢を実現しようと、パーソナル・ロボット産業の発展に、政府が力を入れています。

サムソン電子社ロボット研究グループの主任研究員は、「PR2コミュニティのメンバーが、短期間で数多くのアプリケーションを開発していることに驚きました。企業内研究のために、現在、購入できるロボット研究プラットフォームとしては、PR2がベストだと感じました。」と述べ、Willow Garage社に数日間滞在したソフトウェア開発担当の主任研究員は、「ROSは、可視化ツール、データのログ化ツール、コードの公開や共有の簡単さなど多くの利点を持っています。そして、非常に重要なポイントとして、当社が長い間築いてきたソフトウェア資産と共存し、それらをさらに発展させる可能性を秘めていることです。また、PR2とROSは、密に統合されているため、他の研究所で開発された最先端の研究やコードを簡単に試すことができることも、大変に魅力的です。PR2は、ウェブ上の説明やチュートリアルもよくできているので、ロボットの頭や腕を動かしたり、移動させたりするコードを、1日もかからずに自分達だけで書くことができました。」と述べています。 

2台めのPR2は、ワシントン大学(ワシントン州シアトル市)工学部情報工学・電気工学科のジョシュア・スミス助教授と研究室員に、11月2日に届きました。スミス助教授は、インテル研究所(シアトル)における6年間の研究の中で、IEEE RFID 2009の最優秀論文賞などを取得、この冬より、同大学の助教授となりました。

スミス助教授は、「以前は、ロボット研究を行う前に、ハードウェアもソフトウェアも自分達だけで創りあげなければいけなかった立場にいましたので、今回、有用なアプリケーション開発やイノベーションのための開発に、今すぐ着手できることを、心の底より感謝しています。また、ワシントン大学にとっても、世界中に情熱的なロボット研究仲間のコミュニティが、PR2とROS両方に存在している意義は大きく、私たちもコミュニティの一員として、真摯にコミュニティに貢献し、謙虚に学んでまいります。」と語っています。

3台めのPR2は、ヨーロッパ、フランスの国立科学研究センターLAAS研究所に向かっています。LAAS-CNRSは、フランス南部トゥールーズ大学と提携するフランス国立科学研究センターの研究ユニットの一つです。PR2ロボットを用いた研究は、移動ロボット・制御システム・ロボット協調・タスクや動作プランニング・パーソナルロボット・人とロボットのインタラクションなどの研究に携わってきたロボット・AI研究部門長のラシッド・アラミ博士が担当します。PR2を用いて、高齢者向けの家事など、人を支援するための環境インテリジェンス・システムの中の、高位なインタラクションや認知機能の開発を進めます。また、環境インテリジェンスの開発を目的としたADREAMプログラムの新しい実験用ハウス(建築中)で、インタラクティブなロボットの一つとして利用される予定です。

アラミ博士は、「LAAS-CNRSがPR2を購入した理由は、現在、購入可能なロボットの中で、他と比べて突出した技術的特性を有していることにあります。PR2は、パーソナル・ロボット研究のためのすべての要素を盛り込んだ唯一のプラットフォームです。特に、パーソナル・ロボットによる人々へのサポートの研究を念頭に設計され作られています。ロボットの持つ認識や作業能力の高さに加えWillow Garage社が、世界中の最も著名なロボット研究機関がコミュニティの中で開発した多岐にわたる高品質のコードやライブラリーへのアクセスを提供していることにも、大きな期待感をいだいています。」と述べ、LAAS-CNRSの事務局長アラン・フィリポゥイクスは、「基本ソフトの開発やロボットの細かな組立や設定などに多大なリソースを使わなければいけなかったが、PR2によって、研究者達が今すぐに研究に飛び込ます!」と喜びの言葉を加えた。

首都ワシントン市にあるジョージ・ワシントン大学情報工学部のバン・ドラムライト助教授は、もっとも新しいPR2のオーナーになりました。ドラムライト助教授は、動的なロボット・シミュレーション、動作プランニング、障害物回避などのアルゴリズムの進化を用いて、人々の職務上の業務を複数のロボットが自律的に作業する方法を解明することを研究の主テーマとしています。

「ジョージ・ワシントン大学内の移動マニピュレーター研究の基盤を築くにあたって、ロボット研究に要される膨大な計算能力を備え、堅牢で信頼性の高いハードウェア・プラットフォームを探していました。PR2は、そのまま研究をスタートできるプラットフォームであるため、私たちは、新しい技術や応用の研究に集中することができます。また、シミュレーターを筆頭として、PR2のソフトウェア・ツールは、私たちの研究努力にいまだかつてないほどの研究効率の向上をもたらします。PR2は、世界中の多数の研究者に使われているROSを利用しているので、多くの研究者が既に開発したコードを再利用し、その上に自分たちの開発を行えます。また、私たちも自分達の研究成果を積極的にコードとして公開し、ほかの研究者の方々にどんどん使ってもらいたいです。」とドラムライト助教授は、述べています。



Willow Garageについて
Willow Garage社は、シリコンバレーにて、ロボットの企画と開発、オープンソースのロボットOSの開発、パーソナル・ロボットに向けたオープンソース・コミュニティの発展を目的として貢献していくことに主眼をおいた企業です。PR2(パーソナル・ロボット2)という研究用ハードウェア・プラットフォームとオープンソースのソフトウェア・プラットフォームROS(ロボットOS)を開発しました。ROSは、BSDライセンスで提供され、誰でも、無償で利用も改変もでき、商用目的の利用や改変も無料で提供されています。ロボット分野の技術のイノベーションを促進し、ロボット技術が、社会にポジティブなインパクトを与え、その導入が公正でオープンに行われていくことを主目標としています。当社は、ロボットのハードウェアとソフトウェア技術の両分野の発展において、世界中の研究所や企業と、アドバイザー・協力者・顧客・パートナーとして協業しています。また、自分たちだけでは、オープンソース化するリソースを有さない研究者や技術者に資金や支援を提供しています。さらなる情報は、弊社のウェブサイト(日本語)をご参照いただき、最新ニュースは、@willowgarage (英語)や @willowgarageja (日本語)のツイッターをフォローしてください。

※ 記者発表の原文(英語)は、こちらよりダウンロードできます。

PR2コミュニティー - 16の研究機関(参考情報)
(米国)
・ボッシュ研究所:新しいセンサシステムの開発と参加機関への提供
・ジョージア工科大学:高齢者支援ロボットの研究
・マサチューセッツ工科大学:人と共存環境での安全な移動や自然言語による対話など
・スタンフォード大学:物体の認識やテーブルの片づけなど
・カリフォルニア大学バークレー校:衣服の洗濯からたたむ作業まで一貫作業へのトライ
・ペンシルベニア大学:動的障害物があるなかでの行動計画など
・南カリフォルニア大学:模倣によるスキルの習得から各種ライブラリの構築など
・ワシントン大学
・ジョージ・ワシントン大学
・Willow Garage
(欧州)
・フライブルク大学(ドイツ):片づけロボットの開発
・ミュンヘン工科大学(ドイツ):複雑なキッチン作業を行うための認識したデータの抽象化・意味づけ
・ルーヴァン・カトリック大学(ベルギー):各種ツールやライブラリの開発、人とPR2との協働作業など
・仏国立科学研究センターLAAS研究所(LAAS-CNRS)
(アジア)
・東京大学情報システム工学研究室:日常生活を支援するロボットの開発、複数ロボットによる協調作業
・サムスン電子

広報連絡先(英語):
Tim Smith
Element PR
415-350-3019
Willow Garage社プレスルーム: http://www.willowgarage.com/pages/about-us/press-room

2010年12月14日火曜日

Kinect 3Dセンサーに関する続報(2)ー日本人技術者の活躍!

先日、ご報告申し上げました安価なKinect3Dセンサーの
ドライバーやライブラリー公開とオープンな開発者コミュニティOpenNI設立の記事
ですが、この6日間で、4,000以上のユニークビジターの方々に
お読みいただき、8,000を超えるページビューがありました。

日本からの興味の高さを示すべく、OpenNI管理者が選んだ、
OpenNI利用の優秀デモビデオに、3人の日本人技術者の作品が選ばれました。
また、MIT CSAIL研究所の人物追跡(キネクト+ルンバ)や、
南カリフォルニア大学におけるバーチュアル・リハビリの試みなど、
この6日間の成果を以下のURLに続報としてまとめましたので、
ぜひ、ご覧ください。

http://bit.ly/OpenNI_2

特に、上から3番目のビデオは、たぶん、ご夫婦なのでは?
と思われるのですが、すごく楽しそうに実験しておられて、
観ていてるだけで、楽しくなります :)

オープンな Kinect 3Dセンサーの応用例 最新情報(日本人技術者の活躍やデモビデオなど)!

米国時間12月8日に発表されたKinect 3Dセンサー開発元によるドライバーや骨格トラッキングの公開や、開発者コミュニティOpenNI設立の記事を受けて、このたったの6日間だけで、多くの進展がございました。OpenNIやROSのコミュニティで紹介された進展状況をご報告申し上げます。

OpenNIで紹介された日本人技術者の活躍

ミクミクダンス+Kinect+OpenNI+Sinbad

初音ミクと一緒に動いてもらった

2人のトラッキング(OpenNIとROS niの利用)

OpenNIとROS niの利用例

キネクト+ルンバ+OpenNI+ROS => 人追跡ロボット(MIT CSAIL研究所)

OpenNI利用例

バーチャル・リハビリ&ミドルウェアFAAST(南カリフォルニア大学)



OpenNIの原文
ROS.orgニュースの原文

2010年12月8日水曜日

Kinectの3Dセンサー開発元によるドライバーや骨格トラッキングライブラリーの提供

先月の販売開始より、値段の安さ(100~150ドル)、
使いやすさと深度データの正確さとスピードなどにより、
多くのビジョンやロボット研究者の間で反響が高い
マイクロソフトKinectですが、その3次元センサーを開発した
イスラエルのPrimeSense社が、本日、
  ー 画像と音用の低位ドライバー
  ー NITEライブラリー
    ー 骨格や手をトラッキング
    ー シーン解析により複数の人を判定
をオープンソースとバイナリーの形で、無償公開いたしました。

また、PrimeSense社自身が提供しているハードウェア
を含む開発者用キット
  ー USBのみによる電力供給
  ー Kinectより小さく、軽量
の購入予約も始まりました。

弊社は、PrimeSense社、Side-Kick社とともに、
"Natural Interaction"(自然なインタラクション)を利用した
アプケーションをオープンに育成するための開発者組織
OpenNIをスタートさせました。

以下のデモビデオや詳しい内容は、

NITEライブラリー
  骨格のトラッキング
  手のトラッキング
  シーン解析
ROS-Kinectの利用例
  Kinectを用いた障害物回避とクァッドローターの自律飛行(カリフォルニア大学バークリー校)
  映画マイノリティ・レポート風「手の認識」(マサチューセッツ工科大学CSAIL研究所)
  チェス・ロボット(インテル研究所&ワシントン大学)

http://bit.ly/OpenNI

にてご覧いただけますので、
ご高覧賜りますようお願い申し上げます。

PrimeSense社ドライバーを公開、オープンソース・コミュニティOpenNIを開始

openni.png安価な3次元センサー、マイクロソフトKinect™の赤外線深度カメラを開発したイスラエルのPrimeSense™社は、"Natural Interaction™"(自然なインタラクション)を利用したアプケーションをオープンに育成するための開発者組織OpenNI™をスタートさせました(注:Willow Garage社も創立メンバーとなっています)。

育成努力のはじめとして、プライムセンス社は、マイクロソフトKinect™やプライムセンス社の開発キット5.0(PSDK 5.0)やその他のデバイスに用いられているRGB-Dカメラ向けのオープンソース・ドライバーを公開し、OpenNIの開発者コミュニティ向けに、ハードウェアを提供することになりました。これは、開発元からのカメラやセンサーへの直接のサポートを可能にし、商用利用されている実際の方法が提供されることになります。また、低位ドライバー(画像と音センサー)や高位ソリューション(コンピュータービジョンやトラッキング)との通信を可能にするオープンソースのOpenNI APIも公開されます。最後に、ジェスチャーなどの"Natural Interaction™"を利用したアプリケーションの開発を可能にする骨格(スケルトン)をトラッキングするNITEライブラリーもWindowsとUbuntu向けにリリースされました。Willow Garage社は、PrimeSense社とともに、オープンソース・ドライバーを公開する作業を進めてまいりましたが、PrimeSense社のOpenNI創立メンバーに加われたことを、光栄に存じます。


プライムセンス社のRGB-Dセンサー(カメラ)は、ロボットやその他産業用途に、大量生産される安価な3次元センサーを提供し、輝かしい将来の幕開けとなりそうです。OpenNIは、HRIやHCI(人とロボットやコンピューターとのインタラクション)における3次元認識の利用を加速化させ、3次元認識技術が急速に進化しても、新しいセンサーやライブラリーやアプリケーションが互換性を保つことに貢献します。

この数週間、弊社は、libfreenect/OpenKinect™コミュニティのメンバーとともに、Kinect™ 向けのオープンソース・ドライバーを提供する作業を進めてきましたが、これらの成果を、新たにプライムセンス社から提供される貢献物と迅速に統合する作業をすでに進めています。コンピュータービジョン向けによりよいデータを提供するため、工場出荷時の校正情報(キャリブレーション)や画像レジストレーションなど、センサーAPIが持つフルの情報を利用する予定です。また、NITE™の骨格や手のトラッキングのライブラリーをROS向けにラップしています。骨格トラッキングを利用することにより、映画「マイノリティ・レポート」ばりのユーザー・インターフェースの実現(注:下から2番めのMITによるビデオをご覧ください)が早まります。共通化されたOpenNI APIは、オープンソース・コミュニティ内のOpenNI上に開発したライブラリーやアプリケーションの共有と相互開発を促進します。すでに、libfreenect/OpenKinect™とRGB-Dセンサーを使った多くのすばらしいハックを見てきましたが、開発元提供のドライバーやライブラリーとセンサーのフルな能力とコミュニティのパワーによって、どのようなすばらしい技術やアプリケーションがさらに開発されていくか、大変に楽しみです。

このリリースは、オープンソース・コミュニティ参加者の多くの尽力の賜物によって、可能となりました。プライムセンス社の当初のプランでは、ドライバーのオープンソース化は、もっと後になる予定でしたが、オープンソースKinect™コミュニティの急速な発展と規模の大きさが、プライムセンス社によるオープンソース化の加速化を促し今回のリリースとなりました。今回のアルファ版より正式なリリースは、2011年の初期に予定されていますが、今回可能となったドライバーやライブラリーへアクセスは、開発者が冬の休暇シーズン中に新しい可能性を探るためにいろいろ遊ぶことを可能としました。アルファ版初期であるため、弊社では、フル機能をROSに統合する作業を行い、ドキュメントも準備しています。ROSに統合されたドライバーやNITEライブラリーの利用方法などに関しては、近々、このブログ上にて、進捗状況をご紹介いたします。

プライムセンス社のPSDK 5.0開発キットは、独自に入手が可能になりましたが、ロボット開発にいくつかの利点を提供しています。USBのみの電力供給、センサーは、Kinect™より小さく軽量。プライムセンス社は、この開発キットを限定数、販売しています。こちらにて、PSDK5.0開発キットの購入希望にサインアップできます

OpenNIが提供するバイナリーの入手やさらに詳しい情報は、OpenNI.orgをご覧ください。ソースコードを含んだ開発に興味がある方々は、ソースをGitHub上のリポジトリーで確認でき、メーリングリスト形式の開発者コミュニティgroups.google.com/group/openni-devにも参加できます。Kinect™に関わるROSコミュニティの成果や開発については、ros-Kinect™ MLに、ご参加ください。


原文

Blogでは紹介されていないOpenNIの利用例

リアルタイム(実時間)状況分析(シーン・アナライザー)


手のトラッキング


ROS-Kinectの利用例(すべて、PR2コミュニティメンバー)

カリフォルニア大学バークリー校 - Kinectを用いた障害物回避とクァッドローターの自律飛行


マサチューセッツ工科大学CSAIL研究所 - 映画マイノリティ・レポート風「手の認識」


インテル研究所&ワシントン大学 チェス・ロボット

2010年11月23日火曜日

安価な三次元センサーKinect用オープンソースライブラリー

マイクロソフト社が、11月4日(日本は同月20日)より、
ゲーム機Xbox 360向けに、100~150ドルで販売している
Kinectを利用するためのドライバーや
三次元データに基づいたアプリやライブラリーのが、
オープンソースで提供されはじめています。

OpenKinect (Hector Martin氏による最初のドライバlibfreenectが移行)
http://bit.ly/OpenKinect

弊社では、libfreenectをフォークし、
ニューヨーク市立大学の研究者とともに、
KinectをROS向けに統合し、このビデオで紹介されている
http://bit.ly/ROS-Kinect

 ー 複数のKinectセンサーの利用
 ー 校正(Calibration)
 ー ジェスチャーによる遠隔操作
 ー PR2ロボットへのKinectの装着
   http://bit.ly/KinectOnPR2
 ー チルトモーターのコントロール

などの開発を行っており、新しいHRIやユーザーインターフェース、
動的障害物回避やマニピュレーションなどでの応用や開発が
期待されています。

これらの成果は、無料でオープンソースとして、どなたでも利用できます。
また、MLに参加することで、開発の過程や新しいアイデアに触れたり、
開発に参加することもできます。

ROS-Kinectの活発な過去ログ(1週間前に始まり、既に188通)
http://bit.ly/ROS-Kinect-MLArchive

Kinectの主な仕様
http://bit.ly/Wiki_Kinect
http://bit.ly/KinectHardware (部品などハードウェア関連)

 ー @30Hz
   ー 8bit VGA - RGBカメラ
   ー 11bit VGA(モノクロ2048階調)テキスチャー照射付赤外線カメラ
 ー 認識距離 0.7m - 6m 1.2m - 3.5m (XBox 360ソフト用)
 ー 認識角度 57度(水平)43度(垂直)
 ー 付属モーターにより、上下に27度ずつチルトが可能

Kinectに関する主なニュース

マイクロソフト社は、仕様としてUSBコネクションを開放。
Microsoft approves of Kinect open-source projects
http://bit.ly/MSApprovesOpenSourceKinect

10日で100万台の販売、年内500万台に上方修正
http://engt.co/5mmKinect (Press Releaseの部分)

※ Willow Garage社は、Kinectに関連する機関から、
一切の報酬などは受け取っておりません。
ロボットや認識、マニピュレーション、AIなどに関する
アルゴリズムやライブラリーを開発し、オープンソースかつ無料にて、
ROS, OpenCV, PCL(ポイントクラウド・ライブラリー)などを提供しております。

2010年8月21日土曜日

PR2クイックスタートコンテストのビデオ

ウィローガレージ創業者、スコット・ハッサンがPR2ベータプログラム参加チームを対象に、
「何かクールか、面白いか、役に立つこと」をPR2にさせてビデオにとる、というコンテストを実施しました。
チームアドバイザーやリーダーに迷惑をかけないように、「通常の研究や自分の役割分担の妨げにならないこと」という条件がついていました。

約6週間という短期間で、どんなことができたでしょうか?ぜひ下のビデオをごらんください!

第1位(賞金5000ドル) 「靴下の洗練化(Sockification)」
UCバークレー Ping Chuan Wang、Stephen Miller、Mario Fritz、Trevor Darrell、Pieter Abbeel



第2位(賞金3000ドル) 「郵便配達(Mailman)」 
ボッシュ社 Ben Pitzer



第3位(賞金2000ドル) 「PR2バンド」 
ペンシルベニア大学 Ben Cohen、Daniel Benamy、Mike Phillips



すべてのエントリー作品

Hizookですべてのビデオを一度に観ることができます。

原文

2010年8月20日金曜日

ROS 新機能とともにC Turtle版リリース!

商用改変も自由に行えるBSDライセンス(無償)のもと、
半年毎に新しいバージョンのリリースをおこなっているROSですが、
8月はじめに、C Turtle(バイナリー)版がリリースされました。

今年2月のBox Turtle版からのアップグレードとしては、

  • コアライブラリの改善や多くのバグ取り
  • 低レイテンシ、C++ノード間でのzero-copy式メッセージ通信を提供する「nodelet」
  • Lispクライアントライブラリの公式サポート
  • firewireカメラ用の公式ドライバー
  • サードパーティによるライブラリのバージョンアップ    
    * Stage 3.2.2、Bullet 2.76、Eigen 2.0.15、KDL、Gazebo
  • 試験的ライブラリの導入
    * 三次元知覚、マニピュレーション、把持、ビジュアル・オドメトリ

などが含まれています。

詳しくは、弊社公式の日本語ブログの記事を
ご参照くださいますようお願い申し上げます。
http://bit.ly/ROS-CTurtle


特に、タスクプランナーのSMACHは、ROSとも、
ROSと使わなくても利用できるPythonライブラリーで、
ロボットの行動の分岐やその時々のデータ確認のため、
非常に有効なツールであると思います。
弊社のプラグイン、ビリヤード、カート押し、ビールを取りに行く
などのアプリケーションに大活躍いたしました。
ぜひ、お試しいただきたいと願っております。
http://bit.ly/SMACH


また、弊社に関して、「オープンソースで人を集めて、
Googleにでも売却するのだろう」との非常に残念かつ
勝手な憶測を噂として流している日本の方々がおられました。

弊社創業者が、弊社のビジョンや目的に関して、
約9分間のスピーチを行ないました。
その全文を日本語にて掲載しておりますので、
ぜひ、ご高覧くださいますようお願い申し上げます。

スピーチの中では、

  • 弊社ができたきっかけは、トヨタ自動車の工場に感動したこと
  • 工場の中でのオートメーションが、私たちの日常生活に応用できたら、
    世界経済(GWP)は、100年で、200倍になるから、パーソナルロボットはすばらしい
  • ロボットは難しい
  • 弊社の戦略は、言語が違うMEとEEとCSの人達がいっしょに仕事をできるようにすること
  • 多種多様な研究者、エンジニアと産業界の人々が参加できるコミュニティを成長させること
  • ハードやソフトのプラットフォームを提供し、研究者が効率よくすばらしい研究で立ち上がれることをサポートすること
  • そのようなプラットフォームを所有したくない。コントロールしたくない。
    ゲートキーパーにもなりたくないし、アプリの承認も行いたくない。
  • ただ、研究開発を加速させ、パーソナルロボット産業界の創出をなんとか実現させたい。
    それが、WG社のビジョンであり、創業した理由です。

ということを述べております。
http://bit.ly/WG-Vision

スピーチの映像にでてきますが、2001年7月に、
トヨタ自動車の当時の内山田取締役(現副社長、初代プリウスのチーフエンジニア)
のお招きで工場見学をさせていただいたことが、
現在のROS、PR2、テキサイロボットを生じさせたこと。
当時の共通項が、メーリングリストとコミュニティであったことに
奇遇の縁を感じずにはいられません。

なぜ、毎年、多額のお金を投じて、無償のソフトROSを開発したり、
高価なPR2を無償で、11の研究所に提供した
http://bit.ly/11PR2BetaSites
か、その理由を、創業者のスピーチより、
ご理解いただければ、大変に光栄に存じます。

2010年8月19日木曜日

PR2が購入可能に

PR2ベータプログラムが順調に立ち上がり、世界の11研究機関への発送を完了
すでに各地でPR2を使った研究が活発に行なわれています。
そして今、次のステップとして、PR2を発売することになりました。

ベータプログラムの参加ラボから良い評価をいただくまで、PR2の商用化については時期を待っていましたが、間もなくその時がやってきます。
来月、PR2のご購入について、正式な発表を行ないますので、詳細はしばらくお待ちください。

それまでの間、見積りやその他のお問い合せは、
PR2info@willowgarage.com日本語可)にご連絡ください。

ロボット・コミュニティの方々から多大な反響をいただいているPR2に、私たちは大きな誇りを持っています。
研究者がすぐに実りある研究に着手できる、ハードとソフトを統合したロボットプラットフォームであるPR2とROS。
今日ここまで成長できたのは、オープンソースコミュニティの皆さんのサポートのおかげです。
心から感謝します。

原文

2010年8月17日火曜日

ROS C Turtleの新しいタスクプランナー SMACH



ROS C Turtleに追加された新しい機能の一つは、最近私たちが行った"ハッカソン"において極めて重要なコンポーネントだったものです。例えば、飲み物を冷蔵庫から取ってくるとき、ロボットは冷蔵庫のハンドルをつかむ、ドアを開ける、中に入っている飲み物をスキャンするなど、多くのタスクをこなさなければなりません。予期せぬ状況やエラーに対処しながら、慎重に、これらのタスクを指揮する必要があります。以前、私たちはこういった動作の指示のために複雑なタスクプランニングのシステムを利用していたのですが、開発者、研究者の間で、ロボットの行動のプロトタイプ化のためには、何かもっと迅速に使えるものが必要だと考えていました。

その答えを、インターンの一人が生み出しました。SMACH ("State MACHine"「スマッシュ」と発音)はタスクの指定とコーディネーションのためのアーキテクチャで、Jonathan Bohrenがウィローガレージでの2度目のインターンの研究の一つとして開発しました。Jonathanは、当初ペンシルベニア大学GRASP研究室に在籍していましたが、現在はジョンズホプキンス大学のComputational Sensing and Robotics (LCSR)研究室で博士課程の研究を進めています。ウィローガレージでのインターン期間を延長して研究を続ける間、SMACHは様々なPR2プロジェクトに活用されました。

SMACHはまず、電源差し込みとドアを開けるコードの書き直しに使われ、その後、ビリヤードカート押し飲み物を取りに行く、という3つのハッカソンを通じて洗練されました。これらのプロジェクト全てにおいて、ロボットの行動タスクに関するコードを迅速に書き、タスクの失敗に対応しながらロバストな行動を創りあげていく能力は、非常に重要な役割を果たしました。

SMACHは、ROSから独立したPythonライブラリなので、ROSとでも、そうでなくても、使用可能です。また、現在のSMACHを使ったタスクプランの状況を可視化するビジュアライザーや、内部の状況やデータフローをモニターする内部状態監視ツールなどの重要な開発ツールと一緒に利用できるようになっています。
すでに、たくさんのSMACHのチュートリアルSMACH関連のROS wikiにアップされています。これから、SMACHがより多くのクールなロボットアプリを作り出すのに使われるのを楽しみにしています。

原文

2010年8月3日火曜日

ROS C Turtle リリース!

cturtle_poster.jpg

ROS C Turtleがリリースされました!

ROS C Turtleは、ROSの2番目のディストリビューションです。最初のROS Box Turtle2010年3月2日にリリースされ、ROS安定版とコアライブラリーのほか、navigationrvizなどの開発ツール、ハードウェアドライバや画像処理パイプラインなどを備えたものでした。

ROS C Turtleでは、これらのコアライブラリの改善や多くのバグ取りなどにより、Box Turtleを全面的に改良しました。その改善点の中には、低レイテンシ(遅延)、C++ノード間でのzero-copy式メッセージ通信を提供する新しいアーキテクチャー「nodelet」、Lispクライアントライブラリの公式サポート、firewireカメラ用の公式ドライバー(Jack O'Quin氏の貢献によります)も含まれていています。このリリースでは、非常に多くのサードパーティによるライブラリ、例えば、Stage 3.2.2、Bullet 2.76、Eigen 2.0.15、そしてKDLとGazeboの新しいバージョンなどもアップデートされています。変更リストをごらんいただくと、いかに多くの改良がなされたかが、おわかりいただけます。

本リリースでは新しく、三次元知覚マニピュレーション把持ビジュアル・オドメトリなどの試験的なライブラリが加わっています。早期に試験的な導入をできる方は、これらのライブラリーをさらに安定させるためにも、ぜひこれらを試してフィードバックをお寄せください。

Box Turtleのリリース以来、ROSコミュニティは急速に成長してきました。ROSコードのオープンソースリポジトリが12以上、新たに公開され、移動マニピュレーターから自律操縦ボートまで幅広いロボットプラットフォームにROSが移植されています。UrbiKartoといった商用ロボットソフトウェアのライブラリも今やROSと互換性のあるオープンソースの提供を行い、ROSを使ったロボットプラットフォームは増加の一途をたどっています。ROSコミュニティ内で新しいコラボレーションの機会が増えていることはとても嬉しいことです。みなさんがC Turtleリリースを楽しんで使ってくださることを願っています。

ROSディストリビューションは6ヶ月毎のサイクルで行われます。C Turtleの後継になるDiamondbackは2011年2月にリリースの予定です。

原文

2010年7月26日月曜日

EusLispがオープンソースに

EusLispが、シンプルかつ広く利用されているBSDライセンスにより、オープンソースになりました。EusLispを用いて、20年以上ロボット開発を行ってきた研究成果が、他の研究者とより簡単に共有できるようになります。ROSユーザーもEusLispを利用できるようになります。東京大学の情報システム工学(JSK)研究室はEusLisp環境でROSを使えるようにするroseusパッケージを開発、公開しています。川田工業のHRP-2、AIBO、Nao、そしてウィローガレージのPR2などたくさんのロボットがEusLispによってコンパチブルになりました。

EusLispはLispベースのロボット開発用プログラミング言語です。3次元モデラー、ビジュアライゼーション(可視化)、幾何学モデラー、シミュレーション他の多くの開発環境が統合されたものです。EusLispは元々1986年に松井俊浩さん(産業技術総合研究所)によって開発され、東大JSK研究室でヒューマノイドロボット研究のために長く使用されてきています。

EusLispは知能ロボット研究のための、Common Lispをオブジェクト指向をベースに実現した統合プログラミングシステムです。ロボット研究における主なテーマは、センサーデータ処理、視覚環境認識、衝突回避する動作計画、タスク計画があります。どの問題においても、ロボットと環境の三次元形状モデリングが重要な役割を担っています。EusLispの開発には、高位シンボル処理システムから簡単に利用可能な拡張性のある三次元モデラーの需要に応えることがモチベーションになりました。従来の三次元モデラーを調べてみると、実装言語に必須なのはモデルコンポーネント間のトポロジーを表示、管理するためのリスト処理能力であることがわかりました。数値計算能力も重要でしたが、幾何計算のローカリティによって、ビルトインとしてのベクター/マトリックス機能を持つことでプログラミングが容易になるという推論が立ちました。
EusLispマニュアル Introduction to EusLispのPurpose and Goalからの引用を翻訳しました。)

オープンソースEuslispについて詳しくは、EusLisp.sourceforge.netをご覧ください。
コードは、https://euslisp.svn.sourceforge.net/svnroot/euslisp/trunk/EusLisp/ からダウンロード可能です。

原文

2010年7月22日木曜日

オープンソースUrbiがROSと統合












米国西海岸時間: July 22, 2010

Gostaiのおかげで、UrbiとROSがコンパチブルになりました。Urbi 2.1がちょうどリリースされたところなのですが、ROSとUrbiscriptの統合機能が含まれています。

ROSユーザーにとっては、Urbiscriptによりロボットの行動用のスクリプトを書くための並列化やEventTriggerといった機能を提供する強力なスクリプト環境が提供されます。ROSユーザーは、グラフィックなIDEを提供するGostai Studio Suiteを使用することもできます。GostaiはUrbi kernelをオープンソース(AGPL)でリリースしていて、ロボットのプラットフォームを研究開発するオープンソースコミュニティの成長に貢献してきています。

Urbiユーザーにとっては、ROSによって、ナビゲーション、知覚、マニピュレーションなどの幅広い能力を備えた、再利用可能でオープンソースのソフトウェアコンポーネントのライブラリが急速に充実することになります。

オープンソースUrbiに関して詳しくはUrbi Forgeをご覧ください。Urbi+ROSを使い始めたい方は、UrbiマニュアルUrbi+ROSのチュートリアルをご覧ください。

原文

2010年7月8日木曜日

PR2プロジェクトの紹介: 東京大学情報システム工学研究室(JSK)

米国西海岸時間 July 8, 2010

過去10年間、東京大学JSK研究室は、ヒューマノイドロボットHRP2に、掃除、片付け、オーブンや食器洗い機の操作、野菜を切る、床の掃き掃除などの家事をさせることに取り組んできました。さらにJSKは、日本が直面している急速な少子高齢化社会の様々な課題を、ITとロボット技術を融合したIRT基板技術によって解決することを目指す、IRTプロジェクトの中核的存在です。IRTの目標の1つは社会や生活を支援する3つのロボットシステム、1)キッチンアシストロボットシステム、2)ホームアシスタントロボットシステム、3)そばにいる人の状況を常に観察し、認識・判断を行ない、役に立つアドバイスをするか、他にサポートしてくれる人にコンタクトをとる介護・支援ロボットシステムを実現することです。

JSKのチームは、2009年春からウィローガレージと共同研究を始め、PR2ですでにいくつかのデモ(2009年3月2010年3月)を成功させています。この実績を元に、JSKはPR2ベータプログラムのプロジェクト案を「複数のロボットの協働による人間環境における日常作業のための自律的動作計画」としました。
このプロジェクトの目標でユニークなのは、HRP2とPR2の両方を使い複数のロボットによる協働を実現することです。人間が主体の環境でインタラクションするには、人間や他のロボットを含め、周囲の状況が絶え間なく変化していることを理解する必要があります。JSKチームは、異なる運動学、センサー、制御フレームワークを有するロボットの相互運用を研究していきます。

このプロジェクトでは、マニピュレーションプランニング、タスクプランニング、ダイナミック動作、エラー検出、復旧といった高次の認識モジュールが研究の焦点となるでしょう。推進にあたっての指針としては、パラメーター補正なしか微補正のみで、しかも事前の動作教示や位置の限定を最小限に抑えた形で、人間(ユーザー)がロボットに新しいタスクの仕方を教えやすいシステムをデザインすることです。

またJSKは、ROSを3つのメジャーなフレームワークである、EusLisp、OpenRAVE、OpenRTMと統合させます。JSKは20年近くに渡り、ロボットプログラミング用Lisp言語であるEusLispでソフトウェアのフレームワークを開発してきました。ROSとこのフレームワークが組み合わさることで、EusLispで書かれたプログラムが、より分散型かつマルチプロセスの環境で、ハイレベルのスクリプトとタスクの遂行のために使われるようになります。

JSKのもう一つのプロジェクト、動作計画アルゴリズム開発のためのOpenRAVEはあっという間に人気のプラットフォームになりました。
OpenRAVEは、自律的マニピュレーションにおいて「何が実行可能か」、「現実的か」、「再利用可能か」、「他のロボットへの適用性があるか」について、長らく信じられてきた事を、改めて定義しています。OpenRAVEは、CMUのRosen Diankovによって創られたものであり、彼は今後JSKでこのプラットフォームの研究を続けていきます。

最後に、JSKのOpenRTMプロジェクトは日本政府の資金によって研究が行われており、日本で最も多く支持されていプラットフォームです。日本では、最新のヒューマノイドロボットを含め、多くのプロトタイプがOpenRTMを通して直接ドライバーを提供しています。JSKは、既に提供されているROSの環境を再利用しながら、EusLisp、OpenRAVE、OpenRTM間に特化した信頼性の高いモジュールが、徐々にできていくのを期待しています。

JSKの長期的な目標は、ロボットが職場や家庭で人々の日常を助けることができるロボットを創りだすことです。このロボットは、職場ではオフィスや建物を移動しながら、物を片付けたり、取りに行ったり、運んだり、渡したりする能力を持ちます。また、家庭においては、家電や他の道具を操作して高齢者や障害のある人の支援を行うことができるロボットです。

JSKチームについてTeam photo

このプロジェクトは、約30名の学生と10名の教員からなるJSK全体の協力を得て行われます。

プロジェクトリーダー
稲葉雅幸教授
岡田慧准教授
出杏光魯仙博士

プレゼンテーション

下は、PR2ベータプログラムに参加する11研究機関を対象にしたワークショップにおける岡田慧准教授のプレゼンテーションです。
PDFバージョンのダウンロードはこちらから。



原文

2010年7月6日火曜日

ねえ、ロボット、ビール持ってきて!


米国西海岸時間 July 6, 2010

ウィローガレージでは、金曜日の夕方5時頃になると、多くの人が「あ〜、よく冷えたビール、すごくおいしいだろうな」と考え始めます。しかし、往々にして週末の前に片付けておかなければならない仕事で忙殺されているものです。こういうことがあまりに多いので、もしロボットがビールを持ってきてくれたら完璧なのに、と考えていました。ウィローガレージの夏のハッカソン第3弾の目的は、この夢を叶えることでした。夏のハッカソンでは、既にあるROSのツールとパッケージを使い、月曜日にプログラミングをスタートして金曜日の午後にデモを行ないます。その間睡眠をとるかどうかは、あくまで本人の自由です。

このハッカソンの目標は、しっかり安定した状態で、しかもユーザーフレンドリーにビールをとってきて渡すことでした。さらにロボットに、安全に、どこの部屋にでも届けさせたいと思いました。それには、アームを折り曲げた状態でのナビゲーションが要求されます。

ビールを安全に運ぶために、私たちはPR2のベース部分に”バーキーパー"を設置しました。ロボットのベース部分にあるナビゲーション用レーザーの後ろに、四角い発泡体に4つの穴をあけてビールホルダーを作り、取り付けたのです。3つの丸い穴は、移動する間ビール瓶を入れておくもので、4つめの穴には栓抜きが入っています。オフィスにあるごく標準的な冷蔵庫に傾斜をつけたセルフストッキング(1本取り出すと次のビールがスライドしてくる)のラックを備え付けることで、ロボットが人間の助けを借りなくても、多くの人のリクエストに応じてサービスできるようにしました。

スクリーンショット
ユーザーエクスペリエンス(使いやすさ)については、まず”Beer Me(ビール、頂戴)"という名のウェブアプリケーションに取り掛かりました。このウェブアプリケーションでは、ユーザーに、冷たいビールやサイダーのメニューと、届ける場所を選ぶためのプルダウンメニューが与えられます。誘われるような”Beer Me"ボタンをユーザーが押したら、マジックが実現するかどうかは、ロボットの仕事になります。ロボットは、自律的にナビゲートして冷蔵庫に移動し、ドアを認識。ドアを開くためにはどこの位置をつかむべきかを正確に決定するため、ハンドル部分の検出を行ないます。そしてハンドルをつかんで引っ張り、開いた冷蔵庫の扉が閉じてしまわないように、扉と冷蔵庫の間に移動します。

ロボットは物体認識を使用してどのビールがラックにあるかを判断し、もしユーザーが選んだものがなかったら、それをウェブアプリに報告します。もしあれば、注文されたビールをビールホルダーに入れ、ドアを閉じ、指定された部屋まで運びます。このパズルの最後の1ピースは、どのように手渡しするかでした。パーティで床にビールをこぼして顰蹙をかうようなことを絶対ロボットにさせたくなかったので、手渡しの動作に関しては顔検出機能を加えました。ロボットはビールを差し出し、近距離にある顔を検出するまで待ちます。そして一番近くにいる人を見て、ビール瓶が強く引っ張られたら、グリッパを緩めます。ロボットは、栓抜きを渡し、返してもらうまで待つこともします。また、ロボットに普通の栓抜きを使ってビール瓶を開けさせることにも成功しました。

ロボット研究者はこれまでこんな言葉を耳にしたものでした。「ロボットってクールだと思うけど、ビールは持ってこれるの?」と。PR2はできるようになりました。それどころか、瓶をあけてくれるかもしれませんよ。

RVIZ Beer classification

原文

第一回 オープンソースコード・アワードを発表

KaramanFrazzoli

米国西海岸時間 July 6, 2010

しばらく前に、研究論文に使われるオープンソースのコードを対象に研究者を表彰する「オープンソースコード・アワード」を創設することを決定しました。開発したコードを論文とともに発表・公開することで、ロボット研究における演習がより科学的に向上し、研究の進歩が加速することは間違いありません。このアワードの目的はロボットのオープンソース・コミュニティへ貢献してくれた方々に感謝し、他の研究者のみなさんも同様に貢献されるのを奨励することにあります。

スペインのサラゴサで開催されたRSS2010で、私たちはオープンソースコード・アワードの第一回受賞者を発表しました。今年のRSSで発表された論文の著者を対象に審査が行われ、Sertac KaramanとEmilio Frazzoliが、論文"Incremental Sampling-based Algorithms for Optimal Motion Planning"(最適な行動計画のためのサンプリングによる増分アルゴリズム)に記載されたコードにより、見事受賞しました。これは彼らのRRT(*)ライブラリの公開が評価されたものです。審査委員会は、特にこのコードが論文の理解を促進させること、その再利用性と拡張性について言及していました。さらにこのコードの利用には、オープンソースではないソフトウェアを全く必要としない点も評価を高めました。

今後さらに多くの表彰を行っていくのを楽しみにしています。また、オープンソースを使った論文が増加することを期待しています。

受賞論文(PDF)はこちらでお読みいただけます。

2010年7月2日金曜日

PR2のビリヤードビデオ、20万ビュー突破

PR2が見事なビリヤードを披露したビデオの再生回数(英語版)が20万回を突破しました。
なお、日本語字幕付きのビデオ(再生回数 1339回)はこちらです。

2010年6月30日水曜日

論文募集 IROS 2010 ワークショップ "パーソナルロボットにおける実環境認識の問題の定義と解決”



米国西海岸時間 June 30, 2010

ロボットの認識について研究しているみなさん、
もし、パーソナルロボットの把持やプランニング、人間とロボットのインタラクションやその他の問題を研究している同僚から、
「最近はどの視覚アルゴリズムを使うのがいいのかな」と相談されたら、どう答えますか?
具体的にどのような問題を定義し、抑制し、また解決してきましたか?
その解決策を他のロボット研究にも有効にするにはどうすればいいでしょうか?
このワークショップの目的は、パーソナルロボットの研究者が今日利用可能な視覚アルゴリズムについて意見交換することです。

パーソナルロボットにおける認識の問題を明確に示し(制約条件を含む)、その問題の解決法によって変わるであろうロボットの行動について説明した論文をぜひお寄せください。
解決法は各々実験し、問題を解決できたもので、他の人によって再現可能なものに限ります。(詳細な説明またはソースコードによるものいずれも可)。
問題を解決できるところまで制約条件を加えてみることは可能ですが、解決法は実際の環境に適用できる必要があります。
もちろん論文を提出するしないに関わらず、ぜひワークショップにご参加ください。

論文提出期限は2010年7月23日です。詳しくはワークショップのウェブサイトをご覧ください。

日程:

提出期限  2010年7月23日
採否通知  2010年8月1日 
最終稿提出期限  2010年8月15日
ワークショップ  2010年10月18日

2010年6月29日火曜日

マイルストーン4を達成!

米国西海岸時間 June 29, 2010
PR2ロボットマップ (拡大

先週、PR2ベータプログラムの全ての研究機関に、PR2ロボット発送し終えたことをもって、第4のマイルストーンが達成されました。
4つのマイルストーンは全てこの重要なゴールの完遂に向けて、進捗状況を確認するために設定したものでした。

マイルストーン1は、π(3.14)キロの距離を2日間続けて自律的にナビゲーションするというものでした。第2のマイルストーンでは、自律的にドアを開け、自分で電源プラグを差し込むことができ、マイルストーン3によって、ROS1.0のリリースとROSの文書化および利便性を向上させることができました。

そして今、4つめのマイルストーンの達成によって、PR2を他の研究機関と共有できるようになったことをたいへん嬉しく思います。11台全てのロボットがウィローガレージを旅立ち、それぞれの地に向かっています。スタンフォード、UCバークレー、南カリフォルニア大学、東京大学では、すでにロボットが届き、荷をほどいて木枠から出されました。残りのPR2も今後数週間で到着する予定です。

全てのロボットが一堂に会した眺めも圧巻でしたが、世界中のそれぞれの機関で何が達成されていくのかを見られるのは、さらに素晴らしいことだと思います。今後の発展を楽しみに、私たちもさらにプログラミングを続けていきます。

写真 左から、木枠の上部を外す(南カリフォルニア大学)、PRを木枠から出す(スタンフォード大学)、早速働きはじめるPR2(UCバークレー)

原文

2010年6月28日月曜日

第2のハッカソン PR2がカートを押して片付ける!

米国西海岸時間 June 28, 2010

整理整頓のお手本になりたいと思ってはいるのですが、自分たちで片付けるのをつい忘れてしまうこともあります。今月のハッカソンの2番目は、ロボットが自分でカートを押しながら動き回り、使用済みのカップやボウル、それからスパムの缶詰(ロボットの研究者の必需品なんです)などを集めてキッチンに運び、私たちの代わりに片付けてもらうというものでした。

”カート押し”はROSのナビゲーションスタックにとっていくつか新しい課題がありました。第一に、カートがロボットの前方のセンサーが感知する場所をふさいでしまいます。第二に、ロボットとカートが一緒になると縦長な形状になりますが、既存のプランニングのアルゴリズムはデフォルトでは、ほぼ円形のロボットで最適に作用するようになっているのです。ナビゲーションスタックはモジュラー化され、プラグイン可能な高位のアーキテクチャを有していますが、私たちは代替としてペンシルバニア大学の前方サーチプランナーsbplを使い、今回の条件にあわせたよりよいナビゲーションを実現することができました。

さらに、PR2は自分のいる環境でカップやビンを認識し、どれを片付けるべきか、また安全に運ぶために液体が入っていないのはどれなのかなどを決めなければなりません。これについては、ヒューマン・イン・ザ・ループ(人間が一部を担う)方法を取りました。ロボットは自分の視界の画像を人間(遠隔も可)に送り、人間が次に掴む物体を四角で囲んで指定します。ロボットは対応する物体の位置を三次元で理解し、把持用パイプライン(間もなくリリース予定)を使って物体をつかみあげカートに載せます。

PR2が今すぐにレストランで働くのはおそらく難しいです。しかし、カートや車椅子などの車輪がついた物を押せる能力は、パーソナルロボットにとって非常に有用であることは間違いありません。私たちは引き続き、この能力をさらに堅牢なものに向上させていきます。


2010年6月24日木曜日

パーソナルロボット産業の創出(全文)

PR2ベータプログラム祝賀パーティ ー 2010年5月26日
ウィローガレージ社創業者Scott Hassanのスピーチ(日本語字幕つき)

祝賀パーティの様子は、こちらの記事をご覧ください。



今夜は、みんなに3つのことを話せることを
すごく楽しみにしているんだ。
「なぜ、ロボットは素晴らしいのか?」
「なぜ、ロボットはまだ僕らのまわりにいないのか?」
それから、
「どうすれば、ロボットが実現するのか?」


1. 「なぜ、ロボットは素晴らしいのか?」



じゃあまず最初の「なぜ、ロボットは素晴らしいか?」
を説明するために
ちょっと後ろに下がって、
大きな視点を見てもらおうかな
あれ、どうしたかな。
もうちょっと大きかったはずなんだけど…

さて、僕らはみんなこのナイスで小さな惑星に住んでいるけど
ここってすごく生産的なところだよね。

世界総生産(GWP)は、
ざっと61兆ドルって言われてる。
すごいお金の量だよね。
だけど、これってどこから来てると思う?

実は、この生産性のほとんどは、
工場から来てるんだよ。
それから、古い時代から、すごく成長している
(あ、これ古いスライドだ。笑)
すごく生産性が上がったわけだけど、
そのほとんどは工場のおかげなんだよね。

工場の中ではね…、
そうだ、ちょっと工場について話そうかな。

2、3年前、いやもう10年ぐらい前だな、
僕もちょっと年をとったからね。
何人かの友達と、ほとんど今夜ここに来てるけど、
日本に行ったんだ。

たくさんの素晴らしいお寺とか大都市とか、
それから温泉にも行ったよ。
そうそう、あそこに僕が写っている。
温泉に行くのは絶対におすすめ!

でも、僕らが訪れた中で一番感動したのは
トヨタの自動車工場だったんだ。
少なくとも、僕はそう思った。

トヨタの工場ではほんとに感動したよ。人々がせっせと働いてて、
そこでロボットもせっせと働いてるんだ。
「うわ!すごくクールだよ!」って思った。

「何人ぐらい働いてるんですか?」って
ツアーガイドの人に聞いてみたら、
「400人ぐらいですね」って言うから
「ワオ(すごい)!」って言ったよ。
それで「車、何台ぐらい作ってるんですか?」って聞くと
「1シフトで500台です」って。また「ワオ(すごい)!」だったよ。

これは、絶対的な感動だった。
400人の人間が1日に
そんなたくさんの車を作れるなんて。
自分が車をつくると考えたら、
工具や材料がぜんぶ揃っていたとしても、
自分だけでやろうとしたら
何年もかかるだろうね。

で、「なんで彼らはあんなに生産性が高いんだ?」
って考えてみたんだ。
「僕より強いから?」
「それとも、速いから?」とかってね。
いや、結局は、君とか僕と同じで、
何も違わないんだよ。

だけどもしそうだとしたら、
何かもっと特別な理由があるはずなんだ。
それで気づいたのは、彼らは、自分たちのターゲットとしている
製品をつくるために、すべてが最適化された工場で働いてるんだってこと。

トヨタはもちろん、人間や機械、
組立ラインなどを使っているんだけど、
この高い生産性を創り出すのに一番重要なのは、
オートメーションとロボットだってことなんだ。

ということで、じゃあ、
もしオートメーションを工場から
僕らの日々の生活に持ってきたら何が起こると思う?
とってもクールだよね?

だって僕のまわりのオートメーションだと、
たとえば洗濯機と乾燥機があるんだけど…
あーあぁ…
洗濯機は洗い上がった衣類を、
乾燥機に入れることもできないんだよ!

ところが工場だとフロントガラスを取り付けたり
信じられないようなことをいっぱいしてるんだ。
だから、もし、実現できたらどうなると思う?
もし工場の生産性を僕らの生活に持ってこれたら、
何が起こるだろう?

世界経済はとんでもなく、
でかくなれると思うんだ。
僕が言ってるのは、1%やそこらの経済成長じゃない。
何百%っていう話だよ。

だから、最初に話した61兆ドルを
そう、例えば、200でかけたら、
今から100年後のGWP(世界総生産)は、
それぐらいの数字になる可能性がある。

僕がやりたいのはそういうゲームなんだ。
大きなゲームがしたいんだよ。

それで、「なぜ、ロボットは素晴らしいか?」だけど
つまりロボットが素晴らしいのは、
世界経済にいい影響を与えるからなんだ。

それと
ロボットを欲しくない人っているのかな?
みんなが欲しいと思ってるもののひとつだと思うよ。

今年の1月、母に聞いたんだよね。
っていうのは、父が「なんでお前はロボットを作ってるんだ」
なんて言ったからなんだけど。
「ロボットを、一体誰に売るつもりなんだ?」とかってね。
僕は「わからない。それはまだこれからだよ」って答えた。

で、母に聞いたんだ。
「ねえ、お母さん、ロボット買いたい?」って。
「イエス!!!私は、ロボットを買いたいわ!」
即答だったよ。
「やった!最初のお客さんをゲットしたぞ!」って。でも…


2. 「なぜ、ロボットはまだ僕らのまわりにいないのか?」



2つ目の質問は、
「なぜ、ロボットはまだ僕らのまわりにいないのか?」だったね。

もしロボットがいいアイディアで、生産性もあげてくれるのなら、
なぜここにいないんだろう?
いい質問だよね。

小さなルンバが動きまわったり、
ほかにも2、3のロボットはあるんだけどね。
でも、なぜ世界博覧会で約束されたような
ロボットがまだいないのかってことなんだ。

その質問の答えは「ロボットは難しい」なんだ。
ロボットって、本当に難しいんだよ。

なぜ難しいかっていう理由の一つは、
機械系と電気系とソフトウェアなど、
いろんなものが複雑に組み合わさってるからなんだ。
そう、すごくすごくたくさんの
ソフトウェアが必要なんだ。

この複雑なものを創りあげるためには、
すごく優秀な機械系エンジニアと、
すごく優秀な電気系エンジニアと、
とても素晴らしい
ソフトウェアエンジニアが必要なんだ。

で、そういう人たちを見ていて
わかったんだけど、
僕はソフトウェア出身だから、
こっち側の世界いるんだけど、
機械系エンジニアと話を始めてみたら、
彼らはまったく違う言語で話すんだよ。

彼らとは、話すだけでも本当に大変だった。
なんでかっていうと、いつもこう言うんだよね。
「あー、これはソフトウェアの問題だよ」
で、僕は「違うよ、システムがちゃんと動かないからだよ」って。
で、お互いを批判しあうことになる。だから、
彼らをいっしょに働かせるのはほんとに難しいことなんだよ。

だけど、とってもいい解決方法を見つけたと思う。
「食べ物をあたえる!」ということ。
ま、そしたら...

そう、今はロボットは難しい、
でも問題はもっとたくさんある。
もし問題が一つだけだったら
そんな大きな障害にはならないよ。

今、ロボットにはほとんど投資が
行われてないっていう問題がある。
もうほんとにないんだよね。
特にパーソナルロボットは。

日本は、パーソナルロボットに
多額をつぎこんでる。
なんでかっていうと、国としての(なんて言えばいいかな)、
すごく多い高齢者への
国としての義務として捉えている。

もし投資が行われないと、
人々は研究をしようともしない。
あ、もしここに、ベンチャーキャピタルの人がいたら、
ぜひ、ロボットに投資していきましょうよ。

それで、ロボットになぜ投資が向かわないか?
最も大きな理由は、
(パーソナル)ロボットのマーケットがないからなんだ。
だって、今のロボットは、全然、役に立つことができないから、
お金をつかってもほしいと思えないんだよ。

ということで、マーケットがなかったら、投資は行われない。
投資が行われないから、だれも研究しない。
だから、まだ、ロボットはいないんだよ。
かなしい時代だよ!
おっと、(PR2ベータプログラム参加者に対し)
君らにはロボットがあるよ。(笑)

つまり、これは古典的な
「にわとりと卵」の問題ということ。
ロボットがなければ役に立つアプリは開発できないし、
役に立つアプリがなければロボットは生まれない。


3. 「どうすれば、ロボットが実現するのか?」



ここまでは、
「なぜ、ロボットはまだいないのか?」っていう問題。
では、最後の質問は
「どうすれば実現させられるか?」
「どうすれば”僕らは一緒に”実現させられるのか?」です。

まず、最初に、自分たちだけではできない。
っていうより、自分たちだけで”やりたくない”んだ。
なぜかって?それは、いろんな人たちと一緒にやったほうが楽しいから。

だから、僕らがやっているのは、
僕らの戦略は、研究者や開発者、
企業や産業界の人々による
コミュニティを創り、
一緒に働けるようにすること。新しい産業を創り、
ロボットを実現するという夢に向かって。

僕らが貢献できるかもしれないものは、
”プラットフォーム”なんだ。
頑丈で堅牢なプラットフォームがあれば、
みんながそこから新たなものを構築し、立つことができる。

ソフトウェアエンジニアはソフトウェアに専念でき
ハードウェアエンジニアは、
ハードウェアにあまり時間を使わなくてすむから
研究者たちはその分、すごく高度で、
難しいことを解決できるようになる。

この「プラットフォーム(土台)を創る」
というのがぼくらの戦略で
どんなものか、もう少し後で見てもらえるよ。
すごくたくさんのものでできてるんだよ。

僕が一番言いたい大事なことは、
ウィローガレージは、
これを自分の所有物にしないってこと。
コントロールもしようとは思わない。
僕らはゲートキーパー(門番)なんかしたくない。
このシステムのアプリ承認なんてしたくない。(拍手)

だけど、何より大事なことは
減速しないということ。
(車の)ペダルをメタルに届くぐらい思い切り踏み込んで
この波を加速させ、ロボットを実現させたいんだ。

「なぜ」って?だって僕は若くなれないから、
生きてるうちにこの夢を叶えたいんだ。
そう、これが、僕がウィローガレージを始めた理由。
そして、パーソナルロボットを出現させ
新しい産業を築くというこの会社のビジョンなんだ。


4. ウィローガレージ社のはじまり



これで用意した小さな質問には答えたから、
ここで、ウィローガレージを
はじめた時のことを話したいと思う。

スティーブと僕は一緒に色々試してみたり、
小さなプロジェクトを始めたんだけど、
ある日スティーブが「ちょっとスタンフォードに行かない?
見せたいものがあるんだ」って言ったんだ。
で、僕らはスタンフォードに向かった。僕は「うわー、そういえば
スタンフォードは久しぶりだな」って感じだった。

行ってみると、そこには
2人のちっちゃな子供(キッズ)がいて、
いや失礼、2人の大学院生がいて、彼らが
大切に作った木製のロボットを見せてくれたんだ。

ほんとに感動したよ。
すごくわくわくした!
そのロボットは部屋を掃除したり、
いろんなものをつかみあげることができたんだ。
「これすごいよ!うちには子どももいる。完璧だ!」
ナイフを持って、きゅうりを切ることもできたし、
誰かお年寄りの口に、あ、違う、キーナンだったな、
食べ物を運んで食べさせることもできた。
僕は「これ、すごいよー!」って。

一番感動したのは、彼らが、PR2プログラムやロボットを創るための
しっかりしたビジョンを持ってたってことだった。
しかも、約9ヶ月あればそれらのロボットができるって言う。
僕はもう「すごい!完璧だ!」って興奮状態だった。
「うちの奥さん、いやうちには、
赤ちゃんと調理器がいるんだ。よし競争させよう!」

やっぱり、思いどおりに、
2年半という時を経て、
その間に2人の子どもも生まれ、
ついに今日という日を迎えることができました!
この素晴らしい…テントの中で。しかも雨も降ってない!

では、そろそろここで
この2人の大学院生に登場してもらい、
あ、もう大学院生じゃないか。
チームのみんなと一緒に僕らが取り組んできたことを
披露してもらおうと思う。

そして、これが、
どのように世界を変えていくかを。

2010年6月23日水曜日

PR2プロジェクトの紹介: ボッシュ研究所

米国西海岸時間 June 23, 2010

ボッシュ研究所(米国にある独Bosch社の研究所)

PR2プロジェクト: パーソナルロボット市場の開発 - 新しいセンサーと自律性の共有による新しいアプリケーションの実現

ロボット研究においては、質の高い研究用プラットフォームの利用が非常に限られていることが、新しいアプリケーション開発の大きなネックの一つになっています。Boschによる「PR2リモートラボ」は、PR2を持っていない研究所からでもPR2へのアクセスを可能にします。もちろん、Boschには独自のPR2研究プランもあり、それを世界中の研究者と共有していきます。Boschの北米研究開発センター(RTC)は、より安全で、手頃に手に入り、優れた能力を持つパーソナルロボットを作ることにより、パーソナルロボット市場を開発することに注力していきます。Palo Alto(ウィローガレージの隣りの市)にあるBosch研究所のロボット開発チームは、ドイツ、シュトゥットガルトにあるBosch本社の研究所のセンシング、信号処理、マニファクチャリング等の専門家と緊密に連携をとりながら共同研究しています。

Boschは自らの最新センサー技術をPR2に統合し、新しいアプリケーションとコストの低減化の実現を目指します。センサーの種類としては、加速度センサー、ジャイロセンサー、力センサー、空気圧センサー、新しい近距離センサー等が含まれていて、これらは他のPR2ベータ研究機関でも共有されることになります。

Boschは長期的にはロボットの市場を開発することに主眼をおいています。それは、簡単な作業だけでなく、複雑な環境においても高い信頼性で働くことができ、しかも手が届く価格のロボットを作るということです。この課題に向けてBoschがとろうとしているアプローチの一つは、自律性の共有です。これにはロボットだけではなく人間も含まれます。ロボットが、まだ早く、信頼性の高い作業ができないタスクは人間に手伝ってもらいます。自律的なシステムと人間による操作のそれぞれの強みを統合することで、パフォーマンスを向上させ、システム商用化のコストダウンを図るのが目標です。

Boschは2009年3月からROSを使って開発した成果を公開することでコミュニティに貢献しています。今後、以前このブログで紹介した三次元復元の研究をROSとPR2に発展させます。これによりPR2は正確なテクスチュアによる三次元モデルを自分の環境に構築することができるようになるでしょう。

Boschチームのプレスリリースはこちらです。

チーム紹介

Boschチームはコンピューターサイエンス、機械工学、電気工学、航空工学の研究者とBosch社のセンシング、認識、信号処理、マニファクチャリングの専門家による混成チームです。うち数人は、現在スタンフォードの自律走行車レーシングチームのメンバーでもあります。

* Jan Becker: チームリーダー
* Christian Bersch: プランニング、認識
* Charles DuHadway: 自律性の共有、リモートラボ
* Benjamin Pitzer: 三次元復元、リモートラボ
* Soeren Kammel: 三次元復元、イメージ処理
* Lukas Marti: センサー、信号処理

他に素晴らしいインターン生がチームに加わっています。
Hao Dang (コロンビア大学)、Adam Stambler (ラトガース大学), Michael Styer (スタンフォード大学)、Joerg WagnerとSebastian Haug (ともにシュトゥットガルト大学)

また他地域のBosch研究所の研究者がプロジェクトに参加します。

下は、11のPR2ベータ研究機関が集まったワークショップにおいてJan Beckerが行ったBoschのプロジェクトのプレゼンテーションです(翻訳中)。PDFのスライドは、こちらからダウンロード可能です。



2010年6月16日水曜日

PR2ロボットがビリヤード、ソースを即公開!

先週月曜から始まったウィローガレージの社内ハッカソン
(Hackathon - HackingとMarathonの合成語)で、
少人数チームによる5日間の開発により、
PR2ロボットが、ビリヤードをプレイすることができました。



開発されたコードも、早速BSDライセンス(商用改変可能)で公開されています。
詳しくはこちらの日本語ブログをごらんください。
舞台裏のビデオ(完徹明けの失意と疲労感、達成の喜びが伝わります)

昨晩、弊社ブログに掲載されてから、
科学技術系の主要なブログに、
いっせいに記事(※1)が掲載されました。

弊社が提供している無償オープンソースの分散型ロボットシステム(ROS)の
通信、モジュラー化、ドライバーなどを利用した
実時間制御による正確なクアッドヘリ飛行のビデオ(ペンシルバニア大学)
はこの約3週間弱で、94万回の閲覧がありました。

これに迫るぐらい多くの方々に観ていただき、
科学技術開発への賛同者が増えてほしいと願っています。

弊社では、今週、来週と違うチームが、
  • カートを押しながら、カップや皿をオフィス内から集める
  • 好きな飲み物を冷蔵庫からとってきて配達してくれる
というそれぞれ違うハッカソンに挑戦する予定です。

プログラム初心者でもOKとのことで、私もハッカソンに参加しました。
あまり役に立ってはいないのですが、
一緒に5日間を過ごした中で、気づいたことをあげてみます。
  • 個人個人の得意分野を伸ばす領域を明確に定める
  • ほかの仕事から一切離れる
  • ロボットの現場でとなりあい、いつでも話し合える環境
  • 情報共有のための、MLやWikiの開設
  • 完全にフラットなメンバー間の関係と個人個人への尊重と尊敬
  • 成功した時の、チームメンバーとまわりの士気ややる気の高揚
  • 笑いや笑顔と真剣なコーディングは絶えない
など、プロジェクトの進め方について多くを感じ、
学ぶことが多々ありました。

(※1)昨晩発表後、半日以内の主要ブログ記事


Popsci (Singularity Hubより)








2010年6月15日火曜日

PR2がビリヤード!

米国西海岸時間 June 15, 2010



(上のビデオは日本語字幕がついています。)

ほんの少人数の開発者によるチームの1週間の開発の成果として、PR2がビリヤードをできるようになりました!
「プールシャーク(映画ハスラーより命名)」チームは先週の月曜日に発足し、金曜日からPR2がショットを決められるようになりました。PR2がビリヤード場であなたを打ち負かすようなことすぐにはありません。しかし、金曜日には、(徹夜で疲れきった)チームが祝福のビールを飲もうと決めるまで、5つのショットを決めたんです。

プールシャークチームは先週1週間実に多くの課題に取り組みました。PR2がキューを握るための特殊グリップとブリッジの製作、ボールの検出と位置同定、テーブルの位置推定、ヴィジュアライゼーション(可視化)やインプット用のツール、ショット・セレクターなど他にも多くのものを創りあげました。

オープンソースのビリヤード用ライブラリFastFizを作ってくれたAlon Altmanに心から感謝します。FastFizはビリヤード用の規則や物理エンジンで、プールシャークチームはこれをPR2がどのショットを打つべきかに使いました。今回開発されたコードは早速ビリヤードスタックとして公開されています。

6月はハッカソンの月です。ウィローガレージでは、1週間のハッカソンがあと2つあります。PR2がカートを押しながら片付けることと、冷蔵庫から飲み物を取ってくるというものです。今1つ終わったところ。あと2つです!

これまで行われたハッカソンは

2010年6月9日水曜日

PR2プロジェクト その2 UCバークレー


米国西海岸時間 June 9, 2010

PR2ベータプロジェクト: パーソナルロボットのためのプラットフォーム

カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)はすでにPR2を使った経験があります。昨年の冬、Jeremy Maitin-Shepardがウィローガレージにやってきて何日か夜を徹してPR2で研究を行いました。このプロジェクトの終わる頃にはJeremyは100%の確率でPR2にタオルをたたませることができるようになりました。バークレーがPR2を受け取とろうとしている今、私たちはこのチームが他に何を達成してくれるのかとても楽しみにしています。彼らは、形が定まっていない物体のマニピュレーション、階層的プランニング、認識、デモ学習など意欲的なプロジェクトを行なっていきます。

タオルたたみはバークレーの柔軟物と洗濯に関する研究の始まりに過ぎませんでした。バークレーの研究者たちは今後2年間で、全く新しいレベルに挑むことになります。PR2が洗濯物かごに入っている汚れた衣類を洗濯させ、洗濯し終わったものをたたむ、つまり洗濯を最初から最後までを自分でするというものです。これには、より困難な課題がいくつもあります。タオルたたみにおける課題の一つは、しわくちゃのタオルをまっすぐにして平らにたたむには、どこをつかめばよいのかを正しく特定することです。衣類を用いて、さらに難しい様々な形状のものを扱うための手法を向上させていかなければなりません。またPR2も、洗濯物を最初から最後までするためには、優れたロバスト性を持って操作を行い、新しいタスクを達成する必要があります。

UCバークレーのJason Wolfeは昨年夏のウィローガレージでのインターン期間中にPR2を使って階層的プランニングの研究を行いました。人間は毎日ほとんどの行動においてこの種のプランニングを行っています。もしあなたが 洗濯物を自分の部屋に運ぶのと目覚まし時計の電池交換を両方しなければならないとしたら、おそらく洗濯物かごを持ち上げて部屋に向かう前にキッチンの引き出しを開けてバッテリーを取り出そうと考えるでしょう。2つのことを別々に行うこともできますが、行動をより適切に計画できればより効率的に時間を使うことができます。同様のタスクプランニングがロボットの動作をより効率的なものにします。UCバークレーはこの課題に新しいPR2を使って取り組んでいきます。

認識の研究領域では、PR2が現実世界の物体を探し、それと相互作用する能力を高めていきます。研究領域の中には、ガラスなど透明な物体の認識や人間の検出、物体把持のための正しい方法などが含まれています。

最後になりますが、彼らはPR2にデモ学習させることを計画しています。ロボットのプログラミングは非常に時間がかかり、プログラムの専門家を必要とします。
もしロボットにさせたいことを自分がやってみせるだけでロボットが学習できるとしたらどうでしょうか。彼らはデモ学習によりPR2に単純な組み立てなどのタスクを教えることに挑みます。

チーム紹介

UCバークレーチームは関連分野の幅広い領域の専門家で構成されています。

Prof. Pieter Abbeel: ロボティクスと機械学習
Prof. Trevor Darrell: ロボットの認識とコンピュータビジョン
Prof. Stuart Russell: 階層的プランニングおよび学習
Prof. Ruzena Bajcsy: 三次元復元とロボティクス
Prof. Ken Goldberg: オートメーションとロボティクス
Prof. Bjoern Hartmann: 人間、コンピュータ、ロボット間のインタラクション
Prof. Michael Jordan: 機械学習
Prof. Dan Klein: 自然言語処理
Prof. Jitendra Malik: コンピュータビジョン
Prof. Claire Tomlin: 制御と検証

優秀な大学院生およびポスドクのみなさん
Mario Fritz、Haomiao Huang、Warren Hoburg、Judy Hoffman、Sergey Karayev、 Jeremy Maitin-Shepard、Stephen Miller、Mathieu Salzmann、Pranav Shah、 Arjun Singh、Hyun-Oh Song、Jie Tang、Ramanrayan Vasudevan、Michael Vitus、Jason Wolfe


プレゼンテーション

下はPR2ベータプログラム参加機関が集ったワークショップでArjun Singhが行ったUCバークレーのプロジェクトのプレゼンテーションです。PDFのスライドのダウンロードはこちらから。



原文

2010年6月7日月曜日

PR2プロジェクト その1 ジョージア工科大学 

米国西海岸時間 June 7, 2010

ジョージア工科大学
プロジェクト: 家の中で高齢者をアシストするための移動マニピュレーション

PR2がもうすぐアトランタ州のジョージア工科大学に到着します。そこでは学際的チームがロボットが一人暮らしの高齢者をどのように助けられるかについて研究を行います。アメリカ、ヨーロッパ、日本の人口はみな高齢化が進んでいます。専門家は、少ない若年層人口が介護を行うことでそのコストが跳ね上がり、高齢者が望む介護を受けられなくなることを危惧しています。PR2のようなロボットは高齢者が高いクオリティオブライフを維持しながら自宅で長く生活し続けるのを助けられるかもしれません。ジョージア工科大学のチームの目標はこの長年の夢に向かって前進することです。

このチームは、高齢者が欲することを推測しようとするのではなく、高齢者の要求やいかにしてロボットが助けられるかについて、高齢者とともに取り組み理解していきます。そしてPR2が家の中で高齢者を助ける作業を行うためのコードを書きます。研究のプロセスを通して高齢者と密接に関わっていくことで、本当に求められていることをきちんと知り、研究を加速していくことを期待しています。すべてのことをより現実的にするために、ロボットは、Aware Homeと呼ばれるジョージア工科大学キャンパス内にある本物の二階建ての家で時々過ごします。高齢者が納得できる環境でロボットと一緒に働くことが可能になり、ソフトウェア開発者には彼らの書いたコードを試すよい場となります。

これは壮大なプロジェクトですが、ジョージア工科大学のチームには、見事にやり遂げた経験があります。例えば、ソフトウェア開発を先導するヘルスケア・ロボティクス研究室は重度の運動障害のある人を助けるための人間大のアシスト・ロボットに関して幅広いバックグランドを持っています。彼らのロボット、CodyとEL-Eは既にROSを使っていて、研究室ではこれらのロボットの、ドアやひきだしを開ける照明器具のスイッチを操作する、物体を取ってきて渡すビデオ)、雑然とした環境でオペレーションするための認識など多くの機能をPR2に移植する予定です。さらにはヘルスケアロボット研究室は、人々がCodyやEL-Eに指示を出すために使う直感的なインターフェースを開発しました。例えばレーザーポインターを使ったポイント&クリックインターフェース、RFIDベースのインターフェースダイレクトフィジカルインターフェースなどです。

このチームのもうひとつの鍵となるのは、心理学部のヒューマンファクターとエイジング研究室です。このグループは人間とロボットのインタラクションを先導していきます。彼らは高齢者がロボットを使いたいかに関する最近の調査など高齢者のためのテクノロジーの研究に幅広い経験を持っています。

このPR2チームによって、人々が高齢になっても、ロボットの助けをかりて自宅で自信をもって過ごせるようになる日に近づいていくことでしょう。

チーム紹介

ジョージア工科大学チームは、生物医学エンジニアリング、心理学とインタラクティブ・コンピューティングからの専門知識にたけた研究者たちによって構成されています。何人かのメンバーはジョージア工科大学のロボティクスとインテリジェントマシン・センターとロボティクスのPhDプログラムでも研究しています。

Charlie Kemp 教授 - ヘルスケア・ロボティクスのディレクターであり、プロジェクト全体とソフトウェア開発トラストのリーダーです。Wendy Rogers 教授はヒューマンファクターとエイジング研究室のディレクターで、人間とロボットのインタラクショントラストをリードします。

その他のメンバー

James Rehg 教授 - コンピュータビジョンと機械学習の専門家
Andrea Thomaz 教授 - HRI(人間とロボットのインタラクション)と社会(人間環境)における機械学習のパイオニア
Tracy Mitzner 博士 - ヒューマンファクターとエイジングの専門家
Brian Jones - Aware Home Research Initiative ディレクター

このチームには他に以下の優秀な大学院生とポスドクのグループが参加しています。
Jenay Beer、Tiffany Chen、Travis Deyle、Tucker Hermans、Advait Jain、Marc Killpack、Chih-Hung (Aaron) King、Hai Nguyen、Cory-Ann Smarr

プレゼンテーション

下はPR2ベータプログラム参加機関が集ったワークショップでCharlie Kempが行ったジョージア工科大学のプロジェクトのプレゼンテーションです。PDFによるスライドのダウンロードはこちらから。


この記事にはヘルスケアロボティクス研究室のTravis Deyle(Hizook.comを運営)とCharlie Kemp教授のご協力をいただきました。

2010年6月2日水曜日

PR2卒業パーティのハイライトビデオ! ロボットが世界を変える!


米国西海岸時間 June 2, 2010

PR2ベータプログラムによって無償提供される11台のPR2ロボットを祝福する、PR2卒業パーティのハイライトビデオです。11台のPR2によるダンスなど、いろんな場面をお楽しみください。このパーティを写真でくわしくご報告した以前の記事はこちらです。


訳者より こちらの記事にもビデオがあります。

2010年6月1日火曜日

注目! Gazeboインターフェースが向上、シミュレーションがよりリアルに (ROS C-Turtle)

米国西海岸時間 June 1, 2010

ウィローガレージのGazebo担当エンジニアたちは、GazeboのユーザーインターフェースとPR2ロボットのシミュレーションの質の改善に懸命に取り組んできています。これらの改善点はROSの次期ディストリビューションC-Turtleで利用可能になります。シミュレーションを行う間、シンプルな形状(箱型、球体、円筒)と光源(点、スポット、有指向性)をGUIの中に生成するオプションもあります。この機能によって開発者はシミュレーション環境をダイナミックに変更したり生成したりということがあっという間にできるようになります。修正点は必要に応じてファイルへの保存、リロードが可能です。

またマウスを使って、シミュレーション上で各々の物体を選択し操作することもできるようになります。物体が選択されると3つの輪と6つの箱が物体のまわりに現れます。輪によって3つの座標軸どこにでも物体を回転させることができ、箱を使って物体を移動させる仕組みです。このマニピュレーションのインターフェースは、シミュレーションの修正のための、便利で直感的に使えるツールなのです。スペースバーを押すか停止ボタンを選ぶと、停止、修正もできます。

新しいGazeboのリリースでは、GUIの向上以外にも多くのROSのサービスとトピックのインターフェースが加わります。予定されているGazeboのROS APIについてはこのチュートリアルをチェックしてください。

Gazeboの次期バージョンではPR2のモデルの改善も行われます。グラフィックアーティストの方達の協力を得て、PR2のモデルに細かいメッシュやテクスチャーを追加しました。これらの新しいメッシュはシミュレーションにおけるPR2の表示を向上させるだけではなく、レーザーレンジファインダーなどのセンサーとロボット間のやりとりも改善されます。これら新たに加わる細かな改善は、GPUシェーダとともにPR2のシミュレーションをよりリアルなものにしてくれます。

Gazeboによる高度な現実世界のシミュレーションはGazeboを使ったアルゴリズムの開発とデバッグが進んでいるパワーを感じさせます。下のビデオで、実際に新しい機能をごらんください。



原文

2010年5月28日金曜日

PR2ロボットが卒業 11研究機関へ旅立つ

Formation
Dance Introducing the PR2s Keenan Wyrobek and Eric Berger Scott Hassan, Founder Party Steve Cousins, CEO

米国西海岸時間 May 28, 2010

水曜日の夜、パーティとロボットのお披露目によってPR2プログラムの公式なキックオフが行われました。300人以上のゲストがウィローガレージに集まり、そこで11台のベータロボットが紹介されました。ウィローガレージのファウンダーであるスコット・ハッサンは、ロボットを工場から私たちの日常生活に連れてくることで生産性が向上するという彼のビジョンについて語りました。パーソナルロボットプログラムのディレクターであるキーナン・ワイロベクとエリック・バーガーは、プラットフォームであるPR2(ハードウェア)とROS(ソフトウェア)の概要を説明。中でもROSの採用がロボットコミュニティで急速に増えていることを私たちがいかに喜んでいるかについて話しました。

ロボットのお披露目の後、PR2の提供を受ける研究機関が紹介され、デモ、記念撮影、人とロボットのダンス、と続いていきました。

パーティのビデオは来週アップしますので、お楽しみに!

パーティの写真はこちら

下は紹介記事の一部です。

* CNET: Willow Garage rolls out PR2 robots
* Economist: Tech.view: A robot in every home: Helping hands
* SFGate: Pomp and Circuitry: Willow Garage's robot graduation
* Botjunkie: Willow Garage PR2 Graduation Party
* IEEE Spectrum: Willow Garage's PR2 Robots Graduate, How I Became a Texai Robot and Went Partying
* Singularity Hub: Up Close and Personal With Willow Garage’s PR2, Willow Garage’s PR2 Robots Dance
* Wired Gadget Lab: Willow Garage Holds a 'Graduation Party' for Its Robots

原文

日本語の紹介記事

ビデオ約45万ビュー!ROSを使ったロボット: クワッドローター(ペンシルベニア大学)

米国西海岸時間 May 28, 2010

ROSが空を飛んだ! ペンシルベニア大学GRASP研究室のクワッドローターが、狭い窓をすり抜けたり、垂直着陸したりというあらゆる種類の”アグレッシブ”なアクロバット飛行を披露するこのビデオはインターネットでまたたく間に広まりました(訳者注: 5月31日現在で約45万ビュー)。システム全体でモジュラー化、通信、低位のマイクロコントローラー用コードに高位のROSをミックスさせたものを使用しています。

このプロジェクトの目標は、クワッドローターにアグレッシブな軌道を正確に飛行させるというものでした。システムの基本コンポーネントは、クワッドローターと制御用ラップトップ、Viconのモーションキャプチャーシステムです。搭載されたマイクロコントローラーは1 kHzで姿勢ループ制御を行っています。制御用ラップトップはより高レベルの位置ループ制御を行います。制御用コンピューターはXBeeのリンクを介してクワッドローターと通信します。

制御コンピュータ上での異なるプログラム間の通信はROSを通じて行われます。モーション・キャプチャーのノードはposeメッセージを中央コントローラーに送り、そこでクワッドローターにコマンドを送るコードに順番に制御メッセージをアウトプットします。実験は、クワッドローター実機の動きの非常に正確なディスクリプションを含むクワッドローターのモデルを使い、三次元シミュレーターで行われました。このシミュレーターはハードウェアと同じような方法でROSを通じて通信し、シミュレーション上の実験とクワッドローター実機との切り替えを最小限のオーバーヘッドで可能にします。ROSによって個々の問題を全体から独立させ、コードをモジュラー化したりプログラムを書くことが容易になりました。


この記事に関してペンシルベニア大学のDaniel Mellingerに協力いただいたことを感謝します。

2010年5月27日木曜日

史上初 ロボットの卒業式(ビデオと写真)

PR2の卒業パーティの様子を伝えるDown the Avenueのブログを筆者の許可を得て日本語訳しました。

5月26日、ウィローガレージは歴史上初めてのロボットの卒業式を行った。会場となったのはGoogleが誕生したのと同じカリフォルニア州メンロパーク市、ウィロー通りにある同社オフィスだ。

CEOスティーブ・カズンズとファウンダー、スコット・ハッサンは、ウィローガレージの生い立ち、そのビジョン、そしてこの歴史的な瞬間に至るまでの全てについて胸に迫るスピーチを行った。

数百人のゲストがお祝いに駆けつけた。友人、ファン、社員、地元の市長達、記者、ブロガー、そして大学から。PR2ベータプログラムで選出され、ロボットの無償提供を受ける11大学(訳者注: うち1つは企業の研究所)からの出席者の姿もあった。彼らはPR2のトレーニングとその栄誉を祝うために世界中から集まっていた。



PR2を提供される研究者達は、ウィローガレージのビジョナリー(先覚者)達と、パーソナル・ロボット・プログラムのディレクターであるキーナン・ワイロベクとエリック・バーガーとともに、これから2年間ロボットの研究開発を加速させ、世界を変えるために懸命に取り組んでいくことになる。

下のビデオでは、キーナンとエリックがオープンソース・コミュニティ、選出された大学、ウィローガレージの社員、そしてもちろんPR2ロボット達への感謝を伝えている。PR2ベータプログラムの選考結果が発表されると、PR2はさあお祝いだと言わんばかりに、会場にあふれる人達に向かって小さな旗を振りダンスした。皆の反応からPR2は自分にはファンがいるんだ、とわかったと思う。



それからPR2は会場の人達とダンスしたり、自分の能力を見てもらおうとフロアを元気よく動き回っていた。このパーティはまさしくこんなに素晴らしいことを成し遂げたコミュニティへのお祝いと感謝のためだった。それは、スコットがイベントの最初に言った言葉「自分たちではできないし、自分たちだけでしたくもない」の通りだった。ロボットを陰で支えるさらなる努力、リソース、情熱、そして才能によって、より早く目標が達成されるのだ。



イベント、スピーチ、パーティ、ロボットのダンスの写真やビデオを下に載せた。これから2年間魔法のようにわくわくすることを創出していくROSとウィローガレージのチーム、11研究機関のみなさんの健闘を祈りたい。

ブロガーや記者の前でPR2のデモを行うエリック・バーガー

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エリック・バーガー、スコット・ハッサン、スティーブ・カズンズ、キーナン・ワイロベク

L TO R - Eric Berger Scott Hassan Steve Cousins and Keenan Wryobek

Singularity HubのKeith KleinerとAaron Saenz

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Googleの社員や友人達も祝福に駆けつけた

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テキサイロボットで参加したJohn Markoff

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スコット・ハッサン

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スティーブ・カズンズ

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史上初、PR2ロボットの卒業式

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スティーブ・カズンズとスコット・ハッサン

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写真クレジット: Steve Brehaut

拍手するPR2

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キーナン・ワイロベク

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写真クレジット: Steve Brehaut

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Jonathan KnowlesとRenee Blodgett

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写真クレジット: Steve Brehaut

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写真クレジット: Steve Brehaut

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Kamal ShahとJanet Rae Dupree

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