2010年5月4日火曜日

結果発表: PR2ベータ無償貸与 東大含む11研究機関を選出


米国西海岸時間 May 4, 2010

たくさんの素晴らしいプロジェクト案の応募をいただいたので、当初予定の10研究機関に絞ることが難しく、最終的に11か所になりました。

PR2ベータの無償提供先の募集にご応募いただいた78のプロジェクト案の審査を終え、PR2ベータロボットを無償貸与されることになった11研究機関を発表できることを嬉しく思います。私たちは、応募者数の多さだけでなく、プロジェクト案の質の高さに圧倒されました。アメリカ以外からいただいた応募の存在感も高く、ヨーロッパから3つ、アジアから1つの研究機関が選出されました。提案された研究内容と応用領域の幅広さに、私たちは興奮をおさえられませんでした。と同時に、たった10か所に絞らなくてはならないため、非常に厳しい選択を迫られました。最終的に11か所になったものの、それでも困難を極めました。プロジェクト案を提出するため多くの時間と労力を費やしてくださった皆様に心から感謝いたします。

PR2ベータプログラムは2年間のプロジェクトであり、選出された研究機関は今後それぞれの研究目標の達成に取り組み、協力しあって新しいアプリケーションを開発していくために定期的に会合を持つことになります。
PR2ベータは移動可能なベースをもった堅牢で高性能なロボットのプラットフォームです。マニピュレーションのための双椀、性能豊かなセンサー群、演算処理のために16のCPUコアをもつコンピュータを搭載しています。PR2ベータプログラムロボットには総額440万ドル以上が費やされています。

PR2ベータロボットには、PR2をフルに制御できる、フリー(無償)かつオープンソースであるソフトウェアROSがインストールされています。ROSには、自律によるナビゲーション、マニピュレーション、認識のライブラリなどが含まれています。PR2を受け取った研究機関は、ROSでコードの開発を行い、お互いの研究成果をとても簡単に共有することができます。これはROSコミュニティへの貢献となり、多くのROSコミュニティの研究者がそれぞれのロボットプラットフォームでこれらの成果を活用することが可能になります。

選出された11の研究機関からいただいたプロジェクト案は要約するのが非常に難しいので、その要点の一部を下にご紹介します。これらの研究機関は、今後、その研究結果とともに開発コードをオープンソースのライブラリーとして公開していきます。PR2という共通のハードウェアを提供することにより、研究成果を交換しあったり、これまでとは違った形での共同研究が可能になります。今年のICRAカンファレンスでは、PR2を使った研究に関する論文として自律的な開扉電源プラグ差し込みタオルたたみなどが発表されます。これからどんな成果が現れてくるのか、非常に楽しみにしています。



フライブルク大学(独)  (プロジェクト: TidyUpRobot 片付けロボット)

フライブルク大学のマッピングに関する強みは、複数のオープンソースライブラリ(TOROGMapping)がすでに広く使われているという成果として現れています。彼らはPR2を使ってテーブルの上を整頓することに取り組みます。一方で、基本的だけれどもロボットにとっては難しい能力、例えばいかにしてひきだしや冷蔵庫を開けるか、いかにして異なる物体を認識するか、またこうした情報をロボットのマップにいかにして統合するか、といったことに取り組むことになります。彼らの目標は、高い信頼性をともなう検出、把持、そして物体の移動の達成と、その結果が他のPR2ベータを使う研究機関で再現されることです。

ボッシュ研究所(米国にある独ボッシュ社の研究所) (プロジェクト: パーソナルロボット市場の開発: 新しいセンサーと自律性の共有による新しいアプリケーションの実現)

ボッシュは彼らのマニファクチャリング、センサー技術、消費者向け製品における専門性を生かします。ロボット用センサーをPR2ベータプログラムのメンバー用に作ります。数は限定されますがPR2が環境を感知することのできる"skins"も含まれます。また彼らのPR2を遠隔地からアクセスできるようにして、彼らがROSのためにリリースしてきたライブラリを広く展開していきます。

ジョージア工科大学 (プロジェクト: 家の中で高齢者をアシストするための移動マニピュレーション)

ジョージア工科大学のヘルスケア・ロボット研究室は PR2を"Aware Home"(大学内に設置された実験住宅)に置き、ロボットが家を手入れし、工夫にあふれたアシスト能力で高齢者を助けるにはどうすればよいかについて研究を行います。また、高齢者がロボットとやりとりするためのより簡単な方法を作りだすことや、ロボットがひきだし照明器具を扱う、電気のスイッチをつけるなど、日常生活で物をどう扱うかについての研究も含まれています。彼らの、人間とロボットのインタラクション研究は、ソフトウェア開発が実際の生活で必要とされることと密接につながっていくことにフォーカスしています。

ルーヴァン・カトリック大学(ベルギー) (プロジェクト: 移動マニピュレーションにおけるタスク特定、制御、コーディネーションのためのフレームワークの統合)

ルーヴァン・カトリック大学はロボットのオープンソースコミュニティにおいて中心的役割を果たしています。Orocosプロジェクトを創立した研究所の一つとして、ROSとBlenderの統合など、ROSでロボットの研究開発を行うためのツールやライブラリを向上させていきます。また、例えば混雑した環境で物を運ぶなどPR2と人間が何かを一緒に行うことにも取り組みます。

マサチューセッツ工科大学コンピュータ科学・人工知能研究所(MIT CSAIL) (プロジェクト: 人間中心の環境における移動マニピュレーション)


MIT CSAILによる混成グループはPR2を使って、人間中心の環境でロボットを動かす場合に重要な能力である、安全なナビゲーション、自然言語を使った人間とのやりとりや物体認識、複雑な目標のためのプランニングなどの研究を行います。彼らの研究によって、ロボットがMITの大きな11階建てのStata Centerビルの中を動き回れるだけのマップを作成できるようになります。さらにPR2が食べ物などを片付け、簡単な掃除を行うことにも取り組みます。

スタンフォード大学 (プロジェクト: PR2におけるSTAIR)


PR1はスタンフォード大学のKenneth Salisbury研究室で開発されました。そしてROSSTAIR (スタンフォード人工知能ロボット)プロジェクトから誕生しました。私たちはPR2がSTAIRプロジェクトの新しいプラットフォームとなり革新的研究が行われることを期待しています。彼らは、在庫を管理する、散らかったものを回収する、食事の後でテーブルを片付けるなどのアプリケーションに取り組みます。

ミュンヘン工科大学(独) (プロジェクト: CRAM - 認識データを抽象化するマシンとしてのロボット)

ミュンヘン工科大学(TUM)はPR2に人工知能のスキル三次元認識の能力を与え、キッチンでの色々な仕事を行う際に何を行っているのか意味づけさせるようにします。これらの向上が組み合わさせっていけばPR2がテーブルをセッティングしたり、食器洗い機の中のものを元に戻したり、食事を用意したりといった食事に関わるより複雑なことが可能になることにつながっていきます。

カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー) (プロジェクト: PR2ベータプログラム - パーソナルロボットのためのプラットフォーム)


PR2は今や"タオルたたみロボット"として知られるようになりました。Pieter Abbeel研究室の多大なる努力に感謝します。2ヶ月という短期間で、彼らはPR2に50枚のタオルをきれいにたたませることに成功しました。バークレーは、今後、汚れた服を洗濯してきれいにたたむまでというさらに困難な作業に挑戦します。さらに彼らは階層的プランニング、物体認識の他、デモ学習を応用した実際の組み立てや製造(例:IKEAの製品)にも興味をもっています。

ペンシルベニア大学 (プロジェクト: PR2GRASP - 知覚と意味づけから把持まで)


GRASP研究室のプロジェクトは家庭用のロボットが直面する課題に取り組むものです。これには活発な動きのある環境における人物追跡とナビゲーションのためのプランニング、ロボットの手と人間の手で物を渡しあうことが含まれています。PR2にツールベルトを与えたのも彼らによる貢献の一つです。 これはグリッパの種類を変えさせ、人々の中での追跡とナビゲーションを助け、バネで止められたドアを開けるなど、双椀での難しい動作を行うものです。

南カリフォルニア大学(USC) プロジェクト: 誘引による永続的動作を行うパーソナルロボット(P^3R) - ネットワーク化され、移動でき、人を助けるロボットの実現に向けて)


USCは、カップに液体を注ぐというような未知の状況や作業に適応できる基本的なモータースキルをPR2に教えるというデモをすでに成功させています。彼らは模倣によってスキルを学び、ライブラリを構築し、改良していくという研究を発展させていきます。一方で人間とロボットのインタラクションセンサー向け自己キャリブレーションの研究にも取り組みます。

東京大学情報システム工学(JSK)研究室 プロジェクト: 複数のロボットの協働による人間環境における日常作業のための自律的運動計画)


東京大学JSKは世界最高峰のヒューマノイドロボット研究を行っている研究室の一つです。彼らの目標は、物を片付けたり、身の回りを整頓したりというような日常生活で人間が行うような作業を安全かつ自律的に行えるロボットを作ることです。彼らはさらに、PR2と他のロボットとの協働や、ROS、EusLisp、OpenRAVEの統合にも取り組みます。

(下のビデオの日本語訳はこちら。)

(訳者註) 選出された11研究機関の内訳
米国(7)
ボッシュ研究所(独ボッシュ社の子会社)
ジョージア工科大学
マサチューセッツ工科大学
スタンフォード大学
カリフォルニア大学バークレー校
ペンシルベニア大学
南カリフォルニア大学
欧州(3)
フライブルグ大学(独)
ミュンヘン工科大学(独)
ルーヴァン・カトリック大学(ベルギー)
アジア(1)
東京大学情報システム工学研究室

民間企業はボッシュ研究所のみ。

原文

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