2010年6月30日水曜日

論文募集 IROS 2010 ワークショップ "パーソナルロボットにおける実環境認識の問題の定義と解決”



米国西海岸時間 June 30, 2010

ロボットの認識について研究しているみなさん、
もし、パーソナルロボットの把持やプランニング、人間とロボットのインタラクションやその他の問題を研究している同僚から、
「最近はどの視覚アルゴリズムを使うのがいいのかな」と相談されたら、どう答えますか?
具体的にどのような問題を定義し、抑制し、また解決してきましたか?
その解決策を他のロボット研究にも有効にするにはどうすればいいでしょうか?
このワークショップの目的は、パーソナルロボットの研究者が今日利用可能な視覚アルゴリズムについて意見交換することです。

パーソナルロボットにおける認識の問題を明確に示し(制約条件を含む)、その問題の解決法によって変わるであろうロボットの行動について説明した論文をぜひお寄せください。
解決法は各々実験し、問題を解決できたもので、他の人によって再現可能なものに限ります。(詳細な説明またはソースコードによるものいずれも可)。
問題を解決できるところまで制約条件を加えてみることは可能ですが、解決法は実際の環境に適用できる必要があります。
もちろん論文を提出するしないに関わらず、ぜひワークショップにご参加ください。

論文提出期限は2010年7月23日です。詳しくはワークショップのウェブサイトをご覧ください。

日程:

提出期限  2010年7月23日
採否通知  2010年8月1日 
最終稿提出期限  2010年8月15日
ワークショップ  2010年10月18日

2010年6月29日火曜日

マイルストーン4を達成!

米国西海岸時間 June 29, 2010
PR2ロボットマップ (拡大

先週、PR2ベータプログラムの全ての研究機関に、PR2ロボット発送し終えたことをもって、第4のマイルストーンが達成されました。
4つのマイルストーンは全てこの重要なゴールの完遂に向けて、進捗状況を確認するために設定したものでした。

マイルストーン1は、π(3.14)キロの距離を2日間続けて自律的にナビゲーションするというものでした。第2のマイルストーンでは、自律的にドアを開け、自分で電源プラグを差し込むことができ、マイルストーン3によって、ROS1.0のリリースとROSの文書化および利便性を向上させることができました。

そして今、4つめのマイルストーンの達成によって、PR2を他の研究機関と共有できるようになったことをたいへん嬉しく思います。11台全てのロボットがウィローガレージを旅立ち、それぞれの地に向かっています。スタンフォード、UCバークレー、南カリフォルニア大学、東京大学では、すでにロボットが届き、荷をほどいて木枠から出されました。残りのPR2も今後数週間で到着する予定です。

全てのロボットが一堂に会した眺めも圧巻でしたが、世界中のそれぞれの機関で何が達成されていくのかを見られるのは、さらに素晴らしいことだと思います。今後の発展を楽しみに、私たちもさらにプログラミングを続けていきます。

写真 左から、木枠の上部を外す(南カリフォルニア大学)、PRを木枠から出す(スタンフォード大学)、早速働きはじめるPR2(UCバークレー)

原文

2010年6月28日月曜日

第2のハッカソン PR2がカートを押して片付ける!

米国西海岸時間 June 28, 2010

整理整頓のお手本になりたいと思ってはいるのですが、自分たちで片付けるのをつい忘れてしまうこともあります。今月のハッカソンの2番目は、ロボットが自分でカートを押しながら動き回り、使用済みのカップやボウル、それからスパムの缶詰(ロボットの研究者の必需品なんです)などを集めてキッチンに運び、私たちの代わりに片付けてもらうというものでした。

”カート押し”はROSのナビゲーションスタックにとっていくつか新しい課題がありました。第一に、カートがロボットの前方のセンサーが感知する場所をふさいでしまいます。第二に、ロボットとカートが一緒になると縦長な形状になりますが、既存のプランニングのアルゴリズムはデフォルトでは、ほぼ円形のロボットで最適に作用するようになっているのです。ナビゲーションスタックはモジュラー化され、プラグイン可能な高位のアーキテクチャを有していますが、私たちは代替としてペンシルバニア大学の前方サーチプランナーsbplを使い、今回の条件にあわせたよりよいナビゲーションを実現することができました。

さらに、PR2は自分のいる環境でカップやビンを認識し、どれを片付けるべきか、また安全に運ぶために液体が入っていないのはどれなのかなどを決めなければなりません。これについては、ヒューマン・イン・ザ・ループ(人間が一部を担う)方法を取りました。ロボットは自分の視界の画像を人間(遠隔も可)に送り、人間が次に掴む物体を四角で囲んで指定します。ロボットは対応する物体の位置を三次元で理解し、把持用パイプライン(間もなくリリース予定)を使って物体をつかみあげカートに載せます。

PR2が今すぐにレストランで働くのはおそらく難しいです。しかし、カートや車椅子などの車輪がついた物を押せる能力は、パーソナルロボットにとって非常に有用であることは間違いありません。私たちは引き続き、この能力をさらに堅牢なものに向上させていきます。


2010年6月24日木曜日

パーソナルロボット産業の創出(全文)

PR2ベータプログラム祝賀パーティ ー 2010年5月26日
ウィローガレージ社創業者Scott Hassanのスピーチ(日本語字幕つき)

祝賀パーティの様子は、こちらの記事をご覧ください。



今夜は、みんなに3つのことを話せることを
すごく楽しみにしているんだ。
「なぜ、ロボットは素晴らしいのか?」
「なぜ、ロボットはまだ僕らのまわりにいないのか?」
それから、
「どうすれば、ロボットが実現するのか?」


1. 「なぜ、ロボットは素晴らしいのか?」



じゃあまず最初の「なぜ、ロボットは素晴らしいか?」
を説明するために
ちょっと後ろに下がって、
大きな視点を見てもらおうかな
あれ、どうしたかな。
もうちょっと大きかったはずなんだけど…

さて、僕らはみんなこのナイスで小さな惑星に住んでいるけど
ここってすごく生産的なところだよね。

世界総生産(GWP)は、
ざっと61兆ドルって言われてる。
すごいお金の量だよね。
だけど、これってどこから来てると思う?

実は、この生産性のほとんどは、
工場から来てるんだよ。
それから、古い時代から、すごく成長している
(あ、これ古いスライドだ。笑)
すごく生産性が上がったわけだけど、
そのほとんどは工場のおかげなんだよね。

工場の中ではね…、
そうだ、ちょっと工場について話そうかな。

2、3年前、いやもう10年ぐらい前だな、
僕もちょっと年をとったからね。
何人かの友達と、ほとんど今夜ここに来てるけど、
日本に行ったんだ。

たくさんの素晴らしいお寺とか大都市とか、
それから温泉にも行ったよ。
そうそう、あそこに僕が写っている。
温泉に行くのは絶対におすすめ!

でも、僕らが訪れた中で一番感動したのは
トヨタの自動車工場だったんだ。
少なくとも、僕はそう思った。

トヨタの工場ではほんとに感動したよ。人々がせっせと働いてて、
そこでロボットもせっせと働いてるんだ。
「うわ!すごくクールだよ!」って思った。

「何人ぐらい働いてるんですか?」って
ツアーガイドの人に聞いてみたら、
「400人ぐらいですね」って言うから
「ワオ(すごい)!」って言ったよ。
それで「車、何台ぐらい作ってるんですか?」って聞くと
「1シフトで500台です」って。また「ワオ(すごい)!」だったよ。

これは、絶対的な感動だった。
400人の人間が1日に
そんなたくさんの車を作れるなんて。
自分が車をつくると考えたら、
工具や材料がぜんぶ揃っていたとしても、
自分だけでやろうとしたら
何年もかかるだろうね。

で、「なんで彼らはあんなに生産性が高いんだ?」
って考えてみたんだ。
「僕より強いから?」
「それとも、速いから?」とかってね。
いや、結局は、君とか僕と同じで、
何も違わないんだよ。

だけどもしそうだとしたら、
何かもっと特別な理由があるはずなんだ。
それで気づいたのは、彼らは、自分たちのターゲットとしている
製品をつくるために、すべてが最適化された工場で働いてるんだってこと。

トヨタはもちろん、人間や機械、
組立ラインなどを使っているんだけど、
この高い生産性を創り出すのに一番重要なのは、
オートメーションとロボットだってことなんだ。

ということで、じゃあ、
もしオートメーションを工場から
僕らの日々の生活に持ってきたら何が起こると思う?
とってもクールだよね?

だって僕のまわりのオートメーションだと、
たとえば洗濯機と乾燥機があるんだけど…
あーあぁ…
洗濯機は洗い上がった衣類を、
乾燥機に入れることもできないんだよ!

ところが工場だとフロントガラスを取り付けたり
信じられないようなことをいっぱいしてるんだ。
だから、もし、実現できたらどうなると思う?
もし工場の生産性を僕らの生活に持ってこれたら、
何が起こるだろう?

世界経済はとんでもなく、
でかくなれると思うんだ。
僕が言ってるのは、1%やそこらの経済成長じゃない。
何百%っていう話だよ。

だから、最初に話した61兆ドルを
そう、例えば、200でかけたら、
今から100年後のGWP(世界総生産)は、
それぐらいの数字になる可能性がある。

僕がやりたいのはそういうゲームなんだ。
大きなゲームがしたいんだよ。

それで、「なぜ、ロボットは素晴らしいか?」だけど
つまりロボットが素晴らしいのは、
世界経済にいい影響を与えるからなんだ。

それと
ロボットを欲しくない人っているのかな?
みんなが欲しいと思ってるもののひとつだと思うよ。

今年の1月、母に聞いたんだよね。
っていうのは、父が「なんでお前はロボットを作ってるんだ」
なんて言ったからなんだけど。
「ロボットを、一体誰に売るつもりなんだ?」とかってね。
僕は「わからない。それはまだこれからだよ」って答えた。

で、母に聞いたんだ。
「ねえ、お母さん、ロボット買いたい?」って。
「イエス!!!私は、ロボットを買いたいわ!」
即答だったよ。
「やった!最初のお客さんをゲットしたぞ!」って。でも…


2. 「なぜ、ロボットはまだ僕らのまわりにいないのか?」



2つ目の質問は、
「なぜ、ロボットはまだ僕らのまわりにいないのか?」だったね。

もしロボットがいいアイディアで、生産性もあげてくれるのなら、
なぜここにいないんだろう?
いい質問だよね。

小さなルンバが動きまわったり、
ほかにも2、3のロボットはあるんだけどね。
でも、なぜ世界博覧会で約束されたような
ロボットがまだいないのかってことなんだ。

その質問の答えは「ロボットは難しい」なんだ。
ロボットって、本当に難しいんだよ。

なぜ難しいかっていう理由の一つは、
機械系と電気系とソフトウェアなど、
いろんなものが複雑に組み合わさってるからなんだ。
そう、すごくすごくたくさんの
ソフトウェアが必要なんだ。

この複雑なものを創りあげるためには、
すごく優秀な機械系エンジニアと、
すごく優秀な電気系エンジニアと、
とても素晴らしい
ソフトウェアエンジニアが必要なんだ。

で、そういう人たちを見ていて
わかったんだけど、
僕はソフトウェア出身だから、
こっち側の世界いるんだけど、
機械系エンジニアと話を始めてみたら、
彼らはまったく違う言語で話すんだよ。

彼らとは、話すだけでも本当に大変だった。
なんでかっていうと、いつもこう言うんだよね。
「あー、これはソフトウェアの問題だよ」
で、僕は「違うよ、システムがちゃんと動かないからだよ」って。
で、お互いを批判しあうことになる。だから、
彼らをいっしょに働かせるのはほんとに難しいことなんだよ。

だけど、とってもいい解決方法を見つけたと思う。
「食べ物をあたえる!」ということ。
ま、そしたら...

そう、今はロボットは難しい、
でも問題はもっとたくさんある。
もし問題が一つだけだったら
そんな大きな障害にはならないよ。

今、ロボットにはほとんど投資が
行われてないっていう問題がある。
もうほんとにないんだよね。
特にパーソナルロボットは。

日本は、パーソナルロボットに
多額をつぎこんでる。
なんでかっていうと、国としての(なんて言えばいいかな)、
すごく多い高齢者への
国としての義務として捉えている。

もし投資が行われないと、
人々は研究をしようともしない。
あ、もしここに、ベンチャーキャピタルの人がいたら、
ぜひ、ロボットに投資していきましょうよ。

それで、ロボットになぜ投資が向かわないか?
最も大きな理由は、
(パーソナル)ロボットのマーケットがないからなんだ。
だって、今のロボットは、全然、役に立つことができないから、
お金をつかってもほしいと思えないんだよ。

ということで、マーケットがなかったら、投資は行われない。
投資が行われないから、だれも研究しない。
だから、まだ、ロボットはいないんだよ。
かなしい時代だよ!
おっと、(PR2ベータプログラム参加者に対し)
君らにはロボットがあるよ。(笑)

つまり、これは古典的な
「にわとりと卵」の問題ということ。
ロボットがなければ役に立つアプリは開発できないし、
役に立つアプリがなければロボットは生まれない。


3. 「どうすれば、ロボットが実現するのか?」



ここまでは、
「なぜ、ロボットはまだいないのか?」っていう問題。
では、最後の質問は
「どうすれば実現させられるか?」
「どうすれば”僕らは一緒に”実現させられるのか?」です。

まず、最初に、自分たちだけではできない。
っていうより、自分たちだけで”やりたくない”んだ。
なぜかって?それは、いろんな人たちと一緒にやったほうが楽しいから。

だから、僕らがやっているのは、
僕らの戦略は、研究者や開発者、
企業や産業界の人々による
コミュニティを創り、
一緒に働けるようにすること。新しい産業を創り、
ロボットを実現するという夢に向かって。

僕らが貢献できるかもしれないものは、
”プラットフォーム”なんだ。
頑丈で堅牢なプラットフォームがあれば、
みんながそこから新たなものを構築し、立つことができる。

ソフトウェアエンジニアはソフトウェアに専念でき
ハードウェアエンジニアは、
ハードウェアにあまり時間を使わなくてすむから
研究者たちはその分、すごく高度で、
難しいことを解決できるようになる。

この「プラットフォーム(土台)を創る」
というのがぼくらの戦略で
どんなものか、もう少し後で見てもらえるよ。
すごくたくさんのものでできてるんだよ。

僕が一番言いたい大事なことは、
ウィローガレージは、
これを自分の所有物にしないってこと。
コントロールもしようとは思わない。
僕らはゲートキーパー(門番)なんかしたくない。
このシステムのアプリ承認なんてしたくない。(拍手)

だけど、何より大事なことは
減速しないということ。
(車の)ペダルをメタルに届くぐらい思い切り踏み込んで
この波を加速させ、ロボットを実現させたいんだ。

「なぜ」って?だって僕は若くなれないから、
生きてるうちにこの夢を叶えたいんだ。
そう、これが、僕がウィローガレージを始めた理由。
そして、パーソナルロボットを出現させ
新しい産業を築くというこの会社のビジョンなんだ。


4. ウィローガレージ社のはじまり



これで用意した小さな質問には答えたから、
ここで、ウィローガレージを
はじめた時のことを話したいと思う。

スティーブと僕は一緒に色々試してみたり、
小さなプロジェクトを始めたんだけど、
ある日スティーブが「ちょっとスタンフォードに行かない?
見せたいものがあるんだ」って言ったんだ。
で、僕らはスタンフォードに向かった。僕は「うわー、そういえば
スタンフォードは久しぶりだな」って感じだった。

行ってみると、そこには
2人のちっちゃな子供(キッズ)がいて、
いや失礼、2人の大学院生がいて、彼らが
大切に作った木製のロボットを見せてくれたんだ。

ほんとに感動したよ。
すごくわくわくした!
そのロボットは部屋を掃除したり、
いろんなものをつかみあげることができたんだ。
「これすごいよ!うちには子どももいる。完璧だ!」
ナイフを持って、きゅうりを切ることもできたし、
誰かお年寄りの口に、あ、違う、キーナンだったな、
食べ物を運んで食べさせることもできた。
僕は「これ、すごいよー!」って。

一番感動したのは、彼らが、PR2プログラムやロボットを創るための
しっかりしたビジョンを持ってたってことだった。
しかも、約9ヶ月あればそれらのロボットができるって言う。
僕はもう「すごい!完璧だ!」って興奮状態だった。
「うちの奥さん、いやうちには、
赤ちゃんと調理器がいるんだ。よし競争させよう!」

やっぱり、思いどおりに、
2年半という時を経て、
その間に2人の子どもも生まれ、
ついに今日という日を迎えることができました!
この素晴らしい…テントの中で。しかも雨も降ってない!

では、そろそろここで
この2人の大学院生に登場してもらい、
あ、もう大学院生じゃないか。
チームのみんなと一緒に僕らが取り組んできたことを
披露してもらおうと思う。

そして、これが、
どのように世界を変えていくかを。

2010年6月23日水曜日

PR2プロジェクトの紹介: ボッシュ研究所

米国西海岸時間 June 23, 2010

ボッシュ研究所(米国にある独Bosch社の研究所)

PR2プロジェクト: パーソナルロボット市場の開発 - 新しいセンサーと自律性の共有による新しいアプリケーションの実現

ロボット研究においては、質の高い研究用プラットフォームの利用が非常に限られていることが、新しいアプリケーション開発の大きなネックの一つになっています。Boschによる「PR2リモートラボ」は、PR2を持っていない研究所からでもPR2へのアクセスを可能にします。もちろん、Boschには独自のPR2研究プランもあり、それを世界中の研究者と共有していきます。Boschの北米研究開発センター(RTC)は、より安全で、手頃に手に入り、優れた能力を持つパーソナルロボットを作ることにより、パーソナルロボット市場を開発することに注力していきます。Palo Alto(ウィローガレージの隣りの市)にあるBosch研究所のロボット開発チームは、ドイツ、シュトゥットガルトにあるBosch本社の研究所のセンシング、信号処理、マニファクチャリング等の専門家と緊密に連携をとりながら共同研究しています。

Boschは自らの最新センサー技術をPR2に統合し、新しいアプリケーションとコストの低減化の実現を目指します。センサーの種類としては、加速度センサー、ジャイロセンサー、力センサー、空気圧センサー、新しい近距離センサー等が含まれていて、これらは他のPR2ベータ研究機関でも共有されることになります。

Boschは長期的にはロボットの市場を開発することに主眼をおいています。それは、簡単な作業だけでなく、複雑な環境においても高い信頼性で働くことができ、しかも手が届く価格のロボットを作るということです。この課題に向けてBoschがとろうとしているアプローチの一つは、自律性の共有です。これにはロボットだけではなく人間も含まれます。ロボットが、まだ早く、信頼性の高い作業ができないタスクは人間に手伝ってもらいます。自律的なシステムと人間による操作のそれぞれの強みを統合することで、パフォーマンスを向上させ、システム商用化のコストダウンを図るのが目標です。

Boschは2009年3月からROSを使って開発した成果を公開することでコミュニティに貢献しています。今後、以前このブログで紹介した三次元復元の研究をROSとPR2に発展させます。これによりPR2は正確なテクスチュアによる三次元モデルを自分の環境に構築することができるようになるでしょう。

Boschチームのプレスリリースはこちらです。

チーム紹介

Boschチームはコンピューターサイエンス、機械工学、電気工学、航空工学の研究者とBosch社のセンシング、認識、信号処理、マニファクチャリングの専門家による混成チームです。うち数人は、現在スタンフォードの自律走行車レーシングチームのメンバーでもあります。

* Jan Becker: チームリーダー
* Christian Bersch: プランニング、認識
* Charles DuHadway: 自律性の共有、リモートラボ
* Benjamin Pitzer: 三次元復元、リモートラボ
* Soeren Kammel: 三次元復元、イメージ処理
* Lukas Marti: センサー、信号処理

他に素晴らしいインターン生がチームに加わっています。
Hao Dang (コロンビア大学)、Adam Stambler (ラトガース大学), Michael Styer (スタンフォード大学)、Joerg WagnerとSebastian Haug (ともにシュトゥットガルト大学)

また他地域のBosch研究所の研究者がプロジェクトに参加します。

下は、11のPR2ベータ研究機関が集まったワークショップにおいてJan Beckerが行ったBoschのプロジェクトのプレゼンテーションです(翻訳中)。PDFのスライドは、こちらからダウンロード可能です。



2010年6月16日水曜日

PR2ロボットがビリヤード、ソースを即公開!

先週月曜から始まったウィローガレージの社内ハッカソン
(Hackathon - HackingとMarathonの合成語)で、
少人数チームによる5日間の開発により、
PR2ロボットが、ビリヤードをプレイすることができました。



開発されたコードも、早速BSDライセンス(商用改変可能)で公開されています。
詳しくはこちらの日本語ブログをごらんください。
舞台裏のビデオ(完徹明けの失意と疲労感、達成の喜びが伝わります)

昨晩、弊社ブログに掲載されてから、
科学技術系の主要なブログに、
いっせいに記事(※1)が掲載されました。

弊社が提供している無償オープンソースの分散型ロボットシステム(ROS)の
通信、モジュラー化、ドライバーなどを利用した
実時間制御による正確なクアッドヘリ飛行のビデオ(ペンシルバニア大学)
はこの約3週間弱で、94万回の閲覧がありました。

これに迫るぐらい多くの方々に観ていただき、
科学技術開発への賛同者が増えてほしいと願っています。

弊社では、今週、来週と違うチームが、
  • カートを押しながら、カップや皿をオフィス内から集める
  • 好きな飲み物を冷蔵庫からとってきて配達してくれる
というそれぞれ違うハッカソンに挑戦する予定です。

プログラム初心者でもOKとのことで、私もハッカソンに参加しました。
あまり役に立ってはいないのですが、
一緒に5日間を過ごした中で、気づいたことをあげてみます。
  • 個人個人の得意分野を伸ばす領域を明確に定める
  • ほかの仕事から一切離れる
  • ロボットの現場でとなりあい、いつでも話し合える環境
  • 情報共有のための、MLやWikiの開設
  • 完全にフラットなメンバー間の関係と個人個人への尊重と尊敬
  • 成功した時の、チームメンバーとまわりの士気ややる気の高揚
  • 笑いや笑顔と真剣なコーディングは絶えない
など、プロジェクトの進め方について多くを感じ、
学ぶことが多々ありました。

(※1)昨晩発表後、半日以内の主要ブログ記事


Popsci (Singularity Hubより)








2010年6月15日火曜日

PR2がビリヤード!

米国西海岸時間 June 15, 2010



(上のビデオは日本語字幕がついています。)

ほんの少人数の開発者によるチームの1週間の開発の成果として、PR2がビリヤードをできるようになりました!
「プールシャーク(映画ハスラーより命名)」チームは先週の月曜日に発足し、金曜日からPR2がショットを決められるようになりました。PR2がビリヤード場であなたを打ち負かすようなことすぐにはありません。しかし、金曜日には、(徹夜で疲れきった)チームが祝福のビールを飲もうと決めるまで、5つのショットを決めたんです。

プールシャークチームは先週1週間実に多くの課題に取り組みました。PR2がキューを握るための特殊グリップとブリッジの製作、ボールの検出と位置同定、テーブルの位置推定、ヴィジュアライゼーション(可視化)やインプット用のツール、ショット・セレクターなど他にも多くのものを創りあげました。

オープンソースのビリヤード用ライブラリFastFizを作ってくれたAlon Altmanに心から感謝します。FastFizはビリヤード用の規則や物理エンジンで、プールシャークチームはこれをPR2がどのショットを打つべきかに使いました。今回開発されたコードは早速ビリヤードスタックとして公開されています。

6月はハッカソンの月です。ウィローガレージでは、1週間のハッカソンがあと2つあります。PR2がカートを押しながら片付けることと、冷蔵庫から飲み物を取ってくるというものです。今1つ終わったところ。あと2つです!

これまで行われたハッカソンは

2010年6月9日水曜日

PR2プロジェクト その2 UCバークレー


米国西海岸時間 June 9, 2010

PR2ベータプロジェクト: パーソナルロボットのためのプラットフォーム

カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)はすでにPR2を使った経験があります。昨年の冬、Jeremy Maitin-Shepardがウィローガレージにやってきて何日か夜を徹してPR2で研究を行いました。このプロジェクトの終わる頃にはJeremyは100%の確率でPR2にタオルをたたませることができるようになりました。バークレーがPR2を受け取とろうとしている今、私たちはこのチームが他に何を達成してくれるのかとても楽しみにしています。彼らは、形が定まっていない物体のマニピュレーション、階層的プランニング、認識、デモ学習など意欲的なプロジェクトを行なっていきます。

タオルたたみはバークレーの柔軟物と洗濯に関する研究の始まりに過ぎませんでした。バークレーの研究者たちは今後2年間で、全く新しいレベルに挑むことになります。PR2が洗濯物かごに入っている汚れた衣類を洗濯させ、洗濯し終わったものをたたむ、つまり洗濯を最初から最後までを自分でするというものです。これには、より困難な課題がいくつもあります。タオルたたみにおける課題の一つは、しわくちゃのタオルをまっすぐにして平らにたたむには、どこをつかめばよいのかを正しく特定することです。衣類を用いて、さらに難しい様々な形状のものを扱うための手法を向上させていかなければなりません。またPR2も、洗濯物を最初から最後までするためには、優れたロバスト性を持って操作を行い、新しいタスクを達成する必要があります。

UCバークレーのJason Wolfeは昨年夏のウィローガレージでのインターン期間中にPR2を使って階層的プランニングの研究を行いました。人間は毎日ほとんどの行動においてこの種のプランニングを行っています。もしあなたが 洗濯物を自分の部屋に運ぶのと目覚まし時計の電池交換を両方しなければならないとしたら、おそらく洗濯物かごを持ち上げて部屋に向かう前にキッチンの引き出しを開けてバッテリーを取り出そうと考えるでしょう。2つのことを別々に行うこともできますが、行動をより適切に計画できればより効率的に時間を使うことができます。同様のタスクプランニングがロボットの動作をより効率的なものにします。UCバークレーはこの課題に新しいPR2を使って取り組んでいきます。

認識の研究領域では、PR2が現実世界の物体を探し、それと相互作用する能力を高めていきます。研究領域の中には、ガラスなど透明な物体の認識や人間の検出、物体把持のための正しい方法などが含まれています。

最後になりますが、彼らはPR2にデモ学習させることを計画しています。ロボットのプログラミングは非常に時間がかかり、プログラムの専門家を必要とします。
もしロボットにさせたいことを自分がやってみせるだけでロボットが学習できるとしたらどうでしょうか。彼らはデモ学習によりPR2に単純な組み立てなどのタスクを教えることに挑みます。

チーム紹介

UCバークレーチームは関連分野の幅広い領域の専門家で構成されています。

Prof. Pieter Abbeel: ロボティクスと機械学習
Prof. Trevor Darrell: ロボットの認識とコンピュータビジョン
Prof. Stuart Russell: 階層的プランニングおよび学習
Prof. Ruzena Bajcsy: 三次元復元とロボティクス
Prof. Ken Goldberg: オートメーションとロボティクス
Prof. Bjoern Hartmann: 人間、コンピュータ、ロボット間のインタラクション
Prof. Michael Jordan: 機械学習
Prof. Dan Klein: 自然言語処理
Prof. Jitendra Malik: コンピュータビジョン
Prof. Claire Tomlin: 制御と検証

優秀な大学院生およびポスドクのみなさん
Mario Fritz、Haomiao Huang、Warren Hoburg、Judy Hoffman、Sergey Karayev、 Jeremy Maitin-Shepard、Stephen Miller、Mathieu Salzmann、Pranav Shah、 Arjun Singh、Hyun-Oh Song、Jie Tang、Ramanrayan Vasudevan、Michael Vitus、Jason Wolfe


プレゼンテーション

下はPR2ベータプログラム参加機関が集ったワークショップでArjun Singhが行ったUCバークレーのプロジェクトのプレゼンテーションです。PDFのスライドのダウンロードはこちらから。



原文

2010年6月7日月曜日

PR2プロジェクト その1 ジョージア工科大学 

米国西海岸時間 June 7, 2010

ジョージア工科大学
プロジェクト: 家の中で高齢者をアシストするための移動マニピュレーション

PR2がもうすぐアトランタ州のジョージア工科大学に到着します。そこでは学際的チームがロボットが一人暮らしの高齢者をどのように助けられるかについて研究を行います。アメリカ、ヨーロッパ、日本の人口はみな高齢化が進んでいます。専門家は、少ない若年層人口が介護を行うことでそのコストが跳ね上がり、高齢者が望む介護を受けられなくなることを危惧しています。PR2のようなロボットは高齢者が高いクオリティオブライフを維持しながら自宅で長く生活し続けるのを助けられるかもしれません。ジョージア工科大学のチームの目標はこの長年の夢に向かって前進することです。

このチームは、高齢者が欲することを推測しようとするのではなく、高齢者の要求やいかにしてロボットが助けられるかについて、高齢者とともに取り組み理解していきます。そしてPR2が家の中で高齢者を助ける作業を行うためのコードを書きます。研究のプロセスを通して高齢者と密接に関わっていくことで、本当に求められていることをきちんと知り、研究を加速していくことを期待しています。すべてのことをより現実的にするために、ロボットは、Aware Homeと呼ばれるジョージア工科大学キャンパス内にある本物の二階建ての家で時々過ごします。高齢者が納得できる環境でロボットと一緒に働くことが可能になり、ソフトウェア開発者には彼らの書いたコードを試すよい場となります。

これは壮大なプロジェクトですが、ジョージア工科大学のチームには、見事にやり遂げた経験があります。例えば、ソフトウェア開発を先導するヘルスケア・ロボティクス研究室は重度の運動障害のある人を助けるための人間大のアシスト・ロボットに関して幅広いバックグランドを持っています。彼らのロボット、CodyとEL-Eは既にROSを使っていて、研究室ではこれらのロボットの、ドアやひきだしを開ける照明器具のスイッチを操作する、物体を取ってきて渡すビデオ)、雑然とした環境でオペレーションするための認識など多くの機能をPR2に移植する予定です。さらにはヘルスケアロボット研究室は、人々がCodyやEL-Eに指示を出すために使う直感的なインターフェースを開発しました。例えばレーザーポインターを使ったポイント&クリックインターフェース、RFIDベースのインターフェースダイレクトフィジカルインターフェースなどです。

このチームのもうひとつの鍵となるのは、心理学部のヒューマンファクターとエイジング研究室です。このグループは人間とロボットのインタラクションを先導していきます。彼らは高齢者がロボットを使いたいかに関する最近の調査など高齢者のためのテクノロジーの研究に幅広い経験を持っています。

このPR2チームによって、人々が高齢になっても、ロボットの助けをかりて自宅で自信をもって過ごせるようになる日に近づいていくことでしょう。

チーム紹介

ジョージア工科大学チームは、生物医学エンジニアリング、心理学とインタラクティブ・コンピューティングからの専門知識にたけた研究者たちによって構成されています。何人かのメンバーはジョージア工科大学のロボティクスとインテリジェントマシン・センターとロボティクスのPhDプログラムでも研究しています。

Charlie Kemp 教授 - ヘルスケア・ロボティクスのディレクターであり、プロジェクト全体とソフトウェア開発トラストのリーダーです。Wendy Rogers 教授はヒューマンファクターとエイジング研究室のディレクターで、人間とロボットのインタラクショントラストをリードします。

その他のメンバー

James Rehg 教授 - コンピュータビジョンと機械学習の専門家
Andrea Thomaz 教授 - HRI(人間とロボットのインタラクション)と社会(人間環境)における機械学習のパイオニア
Tracy Mitzner 博士 - ヒューマンファクターとエイジングの専門家
Brian Jones - Aware Home Research Initiative ディレクター

このチームには他に以下の優秀な大学院生とポスドクのグループが参加しています。
Jenay Beer、Tiffany Chen、Travis Deyle、Tucker Hermans、Advait Jain、Marc Killpack、Chih-Hung (Aaron) King、Hai Nguyen、Cory-Ann Smarr

プレゼンテーション

下はPR2ベータプログラム参加機関が集ったワークショップでCharlie Kempが行ったジョージア工科大学のプロジェクトのプレゼンテーションです。PDFによるスライドのダウンロードはこちらから。


この記事にはヘルスケアロボティクス研究室のTravis Deyle(Hizook.comを運営)とCharlie Kemp教授のご協力をいただきました。

2010年6月2日水曜日

PR2卒業パーティのハイライトビデオ! ロボットが世界を変える!


米国西海岸時間 June 2, 2010

PR2ベータプログラムによって無償提供される11台のPR2ロボットを祝福する、PR2卒業パーティのハイライトビデオです。11台のPR2によるダンスなど、いろんな場面をお楽しみください。このパーティを写真でくわしくご報告した以前の記事はこちらです。


訳者より こちらの記事にもビデオがあります。

2010年6月1日火曜日

注目! Gazeboインターフェースが向上、シミュレーションがよりリアルに (ROS C-Turtle)

米国西海岸時間 June 1, 2010

ウィローガレージのGazebo担当エンジニアたちは、GazeboのユーザーインターフェースとPR2ロボットのシミュレーションの質の改善に懸命に取り組んできています。これらの改善点はROSの次期ディストリビューションC-Turtleで利用可能になります。シミュレーションを行う間、シンプルな形状(箱型、球体、円筒)と光源(点、スポット、有指向性)をGUIの中に生成するオプションもあります。この機能によって開発者はシミュレーション環境をダイナミックに変更したり生成したりということがあっという間にできるようになります。修正点は必要に応じてファイルへの保存、リロードが可能です。

またマウスを使って、シミュレーション上で各々の物体を選択し操作することもできるようになります。物体が選択されると3つの輪と6つの箱が物体のまわりに現れます。輪によって3つの座標軸どこにでも物体を回転させることができ、箱を使って物体を移動させる仕組みです。このマニピュレーションのインターフェースは、シミュレーションの修正のための、便利で直感的に使えるツールなのです。スペースバーを押すか停止ボタンを選ぶと、停止、修正もできます。

新しいGazeboのリリースでは、GUIの向上以外にも多くのROSのサービスとトピックのインターフェースが加わります。予定されているGazeboのROS APIについてはこのチュートリアルをチェックしてください。

Gazeboの次期バージョンではPR2のモデルの改善も行われます。グラフィックアーティストの方達の協力を得て、PR2のモデルに細かいメッシュやテクスチャーを追加しました。これらの新しいメッシュはシミュレーションにおけるPR2の表示を向上させるだけではなく、レーザーレンジファインダーなどのセンサーとロボット間のやりとりも改善されます。これら新たに加わる細かな改善は、GPUシェーダとともにPR2のシミュレーションをよりリアルなものにしてくれます。

Gazeboによる高度な現実世界のシミュレーションはGazeboを使ったアルゴリズムの開発とデバッグが進んでいるパワーを感じさせます。下のビデオで、実際に新しい機能をごらんください。



原文