2010年5月12日水曜日

HARK、テキサイ、オープンソースに関する記事(Singularityhub)

HARKのテキサイロボットへの搭載とオープンソースに関して、Singularityhubに読み応えのある記事が掲載されたので、許可を得て日本語にしました。

HARK! テレプレゼンス・ロボットのための音源分離システム

動物の耳が2つある理由の一つは、音が聞こえてくる場所を特定し、まわりの雑音からその音だけに集中させることにあります。ほとんどのテレプレゼンスロボットはマイクを1つしか持たないので、騒がしい部屋で異なる音を分離する能力が奪われてしまっています。京都大学の奥乃博教授とホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパンのシニア・リサーチャー、中臺一博氏はそこに着眼しました。彼らは複数のマイクを使い、人がたくさんいる部屋で異なる音を分離し、音の位置を特定し、テレプレゼンスロボットのリモートユーザーが聞きたい音のチャンネルだけを選ぶことを可能にする、HARK(Honda…Audition for Robots with Kyoto…)というシステムを創り上げました。先日、ホンダ・京都大学のチームがウィローガレージを訪れ、HARKをウィローガレージのオープンソースソフト(ROS)を使ったテレプレゼンス・ロボットであるテキサイに搭載しました。HARKはROS(ロボット・オペレーシング・システム)に統合され公開されました。研究用途においては無償で使えるようになったのです。クールなHARK-テキサイのデモを下のビデオで見ることができます。

テキサイはオープンソースの手法を用いたロバストなテレプレゼンス・ロボットのプラットフォームとして、すでにかなりの感動を与えてくれています。テキサイのリモートユーザーは、テレカンファレンスができるというだけでなく、もっとすごいこと -- ロボットを使ってその空間を探検し、オフィスにいる人たちと自然な形で話しやミーティングができるのです。そしてHARKが加わったことで、人で混み合った場所でテキサイに誰かと一対一で話しをさせられるようになり、テキサイがどこにでもいける能力がさらに向上しました。これは、テレプレゼンスであれ他のものであれ、人間と一緒の空間でともに何かを行うことができる完全に統合されたロボットへ向けての、新たなステップなのです。


このビデオでは、HARKチームがシステムの重要な特徴について説明しています。0:38に、人々が集まって話しをして(そのうち一人は別のテキサイで参加)いる状況で、各人の声を別々のチャンネルに分離させる方法を紹介しています。1:03近くでは、HARKがテキサイに取り付けられた8つのマイクの音源の位置をいかに特定させるかがわかります。そしてこれらをもとにした、極めつけとも言えるデモが、1:21にあります。複数の人が話し、音楽も流れている場所で、テキサイのユーザーがただ一人の声(1から10まで数えているTakeshi Mizumotoさん)だけに集中して聞けるように、HARKが必要のない他の音を選びだし音を消すのです。

音源分離の技術自体は新しいものではありません。奥乃教授と中臺氏は10年以上前にロボット聴覚の共同開発プロジェクトを始めました。2000年に最初の論文を発表してからいくつかの技術的な進展がありましたが、たぶん、ロボット聴覚システムとHARKの最も大きな違いは、HARKがオープンソースであるということです。(ある意味で、と言った方がいいかもしれませんが。)HARKのコードは公開され、ROSに統合されていてます。研究目的には無償、商用目的の応用はライセンス供与により可能になっています。

オープンソースのテクノロジーに強く賛同し、支持している者として、HARKがこのような完全にではないオープンソースの形を選択したことに興味を覚えます。誰でもが無償でコードを使用、改良、構築できるなら研究は急速に進みます。しかし、HARKを使って商用に耐えうるアプリケーションが生まれれば、ホンダ・京都大学の研究開発費を回収できる可能性があるのです。私が知る限り、これは研究用/商用ライセンスによるオープンソースの初めての例ではありません。もしかしたらこのモデルは、オープンな研究を奨励したいが投資についても満足した結果を得たいという人々、またはその逆の立場の人々に対しての妥協策になりうるかもしれないと思います。

今のところはまだ、テキサイへのHARKの統合は、オープンソースのコードやプラットフォームの共有がロボットの研究をいかに加速させるかという新たな一例、と言えるでしょう。ウィローガレージの新しいプロジェクトを知るたびにそのことについて話すのが私の大きな楽しみになっています。そして毎回、その通りだ、だと思うのです。情報をオープンに交換しあうことは、科学を前進させるエンジンにとってのニトロ(亜酸化窒素)みたいなものです。もし私たちがSingularity(シンギュラリティー)に向けてより早く前進していきたいのであれば、こういうオープンなプログラムを科学コミュニティ全体に広げていくことが本当に必要だと思います。

[ビデオのクレジット: Willow Garage]

Aaron Saenz 原文

TimmyよりSingularityhub
日本語訳への快諾、どうもありがとうございました。

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